銀行で融資を申し込む際、銀行からはいろいろ資料の提出が求められます。
その中の一つに試算表があります。
試算表は、財務状況を確認するために必要な資料になります。
試算表は融資審査において極めて重要です。
銀行融資の成否は試算表にかかっていると言っても過言ではありません。
今回は、試算表を作成する際の注意点、審査のポイントについて確認していきます。
目次
試算表とは
試算表とは、日々の仕訳が正しく処理されているかチェックするための資料です。
手書きで経理をしていた時代は、試算表で転記ミスがないかチェックをしていました。
試算表の貸借(借方と貸方)は必ず一致します。
転記ミスがあると貸借がズレるため、ミスを発見することができます。
現在は、会計ソフトを使って経理をするため、試算表で転記ミスをチェックするという役割はなくなりました。
会計ソフトは優秀なため、転記ミスは普通起こりません。
今では試算表は、専ら経営管理に使う内部資料として利用されています。
毎月、試算表を作成することで業績の推移を把握し、経営判断を行うための材料にしています。
試算表と決算書との違い
決算書とは、正式には財務諸表のことです。
貸借対照表や損益計算書といったものを財務諸表と呼びます。
決算が終わると、決算書を作成し確定申告をしなければいけません。
決算書は、少なくとも1年で1回作成することが必要になります。
決算書は、試算表を元に作成します。
毎月作成してきた試算表の集大成が決算書です。
決算書と試算表の大きな違いは、作成される回数です。
試算表は毎月(1年で12回)作成されるのに対し、決算書は1年で1回です。
決算書は、税務署に提出する公的な書類であるのに対し、試算表は経営管理に使う内部資料になります。
なぜ、融資で試算表が必要?
試算表が必要とされる理由は、最新の業績を確認するためです。
決算書は基本的に1年に1回作成します。
そのため、決算から日にちが経つと決算書の数字では最新の業績が確認できなくなります。
試算表であれば毎月作成されるため、直近の業績を確認することができます。
融資を申し込むときに、決算から3か月以上経過している場合、試算表の提出を求められる可能性が高いです。
銀行員は、試算表で会社の財務内容を判断し、本当に資金が必要なのか、きちんと返済できるのかといったことを確認します。
試算表を作成する際の注意点
試算表は融資審査の際に、ほぼ間違いなく必要になります。
試算表を作成する際には、どういったことに注意しないといけないのか具体的に確認していきます。
試算表は毎月作成する
試算表は毎月作成することが基本です。
経理を毎月きちんと行っている場合は、試算表は毎月作成されていることになります。
現在の会計ソフトは良くできているため、仕訳を入力すると自動的に集計され、試算表の形にまとめてくれます。
毎月仕訳を入力するだけで、勝手に試算表はでき上がります。
そんなに難しい話ではないのですが、世の中の会社で毎月きちんと試算表が作成できている会社はそれ程多くありません。
決算の直前になって慌てて経理を行うため、期中では試算表なんか作っていないし、業績も良く分からないという会社が多いのです。
融資の申し込みに行って、銀行から試算表を出してくれと言われたから慌てて試算表を作ったというのでは、融資を受けるための準備が全くできていないと言わざるを得ません。
はっきり言って試算表を作っていない会社は銀行員に舐められます。
お金の管理ができていないのは、試算表を作っていないからだろうと思われます。
数字に弱い経営者という烙印を押され、融資審査のハードルが上がることになりかねません。
前期比較できるようにする
試算表のポイントは、前年同期比較できるようにすることです。
最新の試算表が12月であれば、前年の12月の試算表と比較できるようにしておかないといけません。
銀行員が融資審査をするときは、時系列で業績を判断します。
当期の資料だけでは業績が良くなっているのか悪くなっているのか判断がつかないため、必ず過去の資料と比較して財務状況を判断します。
比較できるようにするためには、同じ基準で資料を作らないといけません。
試算表で注意しないといけないのが、月末が休日のときです。
月末に入金や支払いがある場合、月末が休日だと翌月の始めに、入金や支払いがズレることがあります。
例えば、社会保険料の引き落としは月末になりますが、月末が土日の場合は翌営業日に引き落とされるため、月が替わってしまいます。
支払いは翌月になりますが、本来は当月の経費になります。
業績を月別で比較するためには、経費は発生ベースで処理をしておかないと行けません。
会計用語で「発生主義」と言いますが、現金の出入りで処理するのではなく、支出および収入の必要性が発生したときに処理する必要があります。
減価償却費を見積計上する
月ごとに業績を判断できるようにするには、毎月減価償却費を見積計上しておくことが大切です。
減価償却費の計上は決算処理で行うため、期中に減価償却費を計上していなくても間違いではありません。
しかし、業績管理を正確に行うという観点からは、期中に減価償却費を見積計上しておくべきです。
試算表の数字だけ見ると黒字になっている場合でも、減価償却費を加味すると赤字だったということもあります。
融資審査の際、減価償却費が計上されていなかったとしても、減価償却費分の調整を加えた上で財務内容を判断します。
融資審査で影響がないのであれば、パッと見で利益がどれだけ出ているのか分かるように、減価償却費を見積計上しておいた方が良いです。
融資審査でチェックされるポイント
次に銀行員は、試算表のどこをチェックするのか確認していきます。
前期比較
試算表では、前期比較を行い、大きく変動している科目がないか、あるいは、残高に変動がない科目がないか確認します。
大きく変動している科目は、なぜ変動しているのか理由を説明できないといけません。
また、残高に変動がない科目についても目を付けられます。
残高に変動がないということは、長期間に渡って固定化している可能性があるからです。
貸付金や売掛金で動きがないと、回収できない不良債権なのではないかと疑われます。
棚卸資産(在庫)
期中に棚卸をしていない場合、試算表上の棚卸資産と実際に存在する棚卸資産では金額に乖離がある場合があります。
特に、相場によって棚卸資産の金額に変動がある場合は、実際の棚卸資産の数字に置き換えた上で財務内容を判断します。
棚卸資産の評価によっては、試算表上は黒字になっていても、赤字と判断される可能性もあるため注意が必要です。
回転期間
銀行は財務内容を確認する際に、回転期間分析という手法を使います。
棚卸資産回転期間、受取手形回転期間、買掛金回転期間といったものです。
回転期間を使うと、企業規模が違う場合でも同業他社の平均値と比較することができるため、試算表の異常値を発見しやすくなります。
銀行は膨大な取引先を持っているため、この業種であればこのくらいの数字になるというデータを持っています。
そのため、試算表上の数字が業界平均と大きく乖離する場合は、理由を聞かれることになります。
普段から同業他社と自社ではどのような違いがあるのか意識しておいた方が良いです。
粉飾がないか
試算表を毎月提出できるということは、経理がきちんと行われている可能性が高いです。
決算書で粉飾を行っている会社の場合、試算表と決算書では数字が乖離するため、試算表は見せたがりません。
試算表を見せると粉飾がばれてしまうからです。
銀行は、取引先の業績には常に目を光らせています。
一度融資を受けると、定期的に試算表を銀行に提出しなければいけません。
銀行員は忙しいので、試算表をくださいと毎月は言ってきませんが、本当は試算表がほしいと思っています。
そんな時に、会社側から自主的に試算表を提出すると銀行からの見方が変わります。
自社の業績や経理の正確性に自信がないと、なかなか自ら試算表を提出することはできません。
そのため、自主的に試算表を提出する姿勢は、銀行に評価される可能性が高いです。
まとめ
試算表は、銀行融資を受ける上で極めて重要な資料になります。
また、経営管理を行う上でも必須の資料です。
試算表を毎月作成するためには、毎月きちんと経理を行うことが不可欠です。
正確な経理を行うことが、資金調達に強い会社になるための一歩です。
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