個人事業主になった場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか?
新しく個人事業主となると、税務署にいろいろ書類を提出しなければいけません。
会社員であれば、会社が手続きをしてくれたかもしれませんが、これからは自分で手続きを行う必要があります。
今回は、独立・企業・フリーランスになった場合に、どのような書類が必要になるのか確認していきます。
目次
独立・起業したときに提出する書類一覧
必ず必要になる書類と、必須ではないが提出すれば有利になる書類があります。
届出書類 | 提出が必要となる主な場合 | 提出時期 |
開業届 | 新たに事業を開始した場合 | 事業開始から1か月以内 |
青色申告承認申請書 | 青色申告をしたい場合 | 原則事業開始から2か月以内 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 源泉所得税の納期を年2回に変更したい場合 | 適用を受けようとする月の前月末日 |
青色事業専従者給与に関する届出書 | 親族(専従者)に給与を支払うことになった場合 | 原則適用を受けようとする年の3月15日 |
消費税課税事業者選択届出書 | 消費税の納税義務者になりたい場合 | 開業した年の12月31日など |
具体的に一つずつ確認していきます。
開業届
正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」になります。
新たに事業を開始した場合は、必ず提出しなければならない書類になります。
冒頭で説明した書類一覧の図にいろいろ書類がありますが、独立・起業した際に最低限提出しなければいけないのは「個人事業の開業・廃業等届出書」だけです。
記載内容はシンプルですので心配は不要です。
私も独立時に「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出しに行きましたが、ものの数分で受理されました。
青色申告承認申請書
正式名称は「所得税の青色申告承認申請書」になります。
青色申告をしたい場合に、任意に提出する書類になります。
確定申告をするにあたり、青色申告と白色申告というものがあります。
青色申告は、複式簿記で帳簿を作成し申告を行うことで、特別控除などの特典が適用されるものです。
青色申告と白色申告のそれぞれの特徴は下記になります。
青色申告 | 白色申告 | |
メリット | 青色申告特別控除(最高65万円)
赤字を3年間繰り越せる 家族への給料を経費にできる(専従者給与) |
経理が簡単 |
デメリット | 経理が少し面倒 | 青色申告のような特典なし |
青色申告のメリットが大きいので、通常は開業届と合わせて「青色申告承認申請書」を提出することになります。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
所得税の源泉徴収が必要になった場合、原則として源泉所得税は翌月10日までに納付しなければいけません。
従業員がいない場合でも、税理士や社会保険労務士、司法書士などに仕事を依頼した場合は、源泉徴収が必要になる場合があります。
税理士と顧問契約している場合は、毎月10日までに源泉所得税を納めなくてはいけません。
毎月処理しなければいけないのは、結構大変です。
小規模事業者には「源泉所得税の納期の特例」という簡便的な処理が認められています。
「納特(のうとく)」と呼んだりします。
納特が適用されると、源泉所得税の納付は年2回でよくなります。
1月~6月に発生した支払いに係る源泉所得税…7月10日まで
7月~12月に発生した支払いに係る源泉所得税…翌年1月20日まで
ただし、納特には次の要件が定められています。
- 給与を支給する人数が常時9人以下である事業主
あくまで簡便的な処理であるため、小規模事業者にしか認められていません。
従業員が9人以下の場合は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出しておくことをおすすめします。
青色事業専従者給与に関する届出書
家族へ給与を支払う場合「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することで経費にできるようになります。
こちらは青色申告の特典になるので「所得税の青色申告承認申請書」を合わせて提出することが必要になります。
青色事業専従者給与が利用できる人には要件があります。
- 事業主と同一生計
- 15歳以上の家族や親族
- 1年の半分超をその事業に専念している
家族への給与を経費にできるようになると節税の効果が非常に高いです。
家族で事業を行っている場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出を検討してみましょう。
消費税課税事業者選択届出書
「消費税課税事業者選択届出書」は消費税に関する届出書になります。
消費税に関しては「課税事業者」と「免税事業者」の2種類があります。
課税事業者は、消費税の納税義務がある事業者です。
免税事業者は、課税事業者の反対で、消費税の納税義務が免除される事業者です。
事業をはじめた当初は多くの場合、免税事業者になります。
消費税を納めなくても良いので、通常は免税事業者の方が有利になります。
しかし、場合によっては課税事業者の方が有利になることがあります。
例えば、多額の設備投資をしたようなケースです。
消費税の仕組みは下記のようになっています。
受け取った消費税(売上分) – 支払った消費税(仕入分) = 納める消費税
黒字の場合は通常、受け取った消費税の方が多くなるので、最終的に消費税を納付することになります。
しかし、事業をはじめた当初で売上が少ない場合は、支払った消費税の方が多くなることがあります。
多額の設備投資をしている場合は、支払った消費税の方が多い可能性が高いです。
支払った消費税の方が多くなると、消費税は還付されます。
ただし、還付を受けるためには課税事業者であることが必要になります。
そのため、何もしないと免税事業者であるところを「消費税課税事業者選択届出書」を提出して、あえて課税事業者になるのです。
免税事業者の方が良いのか、課税事業者になった方が良いのかは、翌年以降のことも考えて総合的に判断しないといけません。
このあたりの判断は非常に難しいので、顧問税理士と相談しながら方向性を決めるのが良いと思います。
書類の提出方法
各種書類の提出先は、所轄の税務署になります。
通常は、事業を行っている所在地の管轄の税務署になります。
各種書類は、ホームページでダウンロードすることができますし、税務署でもらうこともできます。
書類は必要部数が1部であっても、必ず2部作成します。
1部は自分用の控えです。
税務署に提出した書類は非常に大切です。
あとから何の書類を提出したのか確認できるように、控えは必ず保管しておきましょう。
控えにも税務署の収受印を押してもらいます。
税務署に持参
税務署に書類を持参することで受け付けてもらえます。
窓口で書類の記載内容を確認してもらえるので、書類の書き方に自信がない場合は税務署に持参するのが無難です。
印鑑は必ず持参しましょう。
持ち物
- 印鑑
郵送
郵送で提出することもできます。
郵送するときは、自分用の控えと返信用の封筒(切手付き)も忘れずに同封します。
書類の受付が完了すると、税務署が控えを送付してくれます。
記載内容に不備があった場合を考えて、書類は提出期限ぎりぎりにならないように余裕をもって送りましょう。
送付物
- 提出書類(税務署提出用)
- 提出書類(自分用の控え)
- 返信用封筒(切手の貼付を忘れずに)
まとめ
納税者に有利な取扱いを受けたい場合は、事前に書類を提出する必要があることが多いです。
税務関係の書類は、提出時期が書類ごとに定められています。
うっかり提出期限が過ぎてしまっていたということにならないように注意が必要です。
はじめて事業を行う方は書類の多さにとまどうこともあるでしょう。
判断に迷う場合は専門家に相談してみるのも良いと思います。