所得税における「一時所得」と「雑所得」の違いについて

所得税における「一時所得」と「雑所得」の違いについて

所得税では、課税の対象となる所得について、10種類に区分した上で税額を計算します。

10種類の中には「一時所得」と「雑所得」が含まれています。

この2つの区分は違いが分かりにくいため、所得を分類する際にミスをしやすい項目になります。

今回は、一時所得と雑所得の違いについてみていきます。

一時所得

一時所得とは

一時所得とは、継続性がなく、一時的に生じる所得のことをいいます。

毎年発生するものではなく、今年たまたま発生した臨時収入が一時所得になるイメージです。

一時所得の具体例

次のようなものが一時所得になります。

  • 懸賞の賞金品、福引の当選金品等
  • 競馬や競輪などの払戻金
  • 生命保険契約等に基づく一時金及び損害保険契約等に基づく満期返戻金等
  • 法人から贈与された金品
  • 遺失物拾得者が受ける報労金
  • 借家人が立退きに際して受ける立退料

なお、宝くじの当選金は、一時所得に該当せず、非課税となります。

一時所得の計算方法

{ 総収入金額 - 必要経費 - 特別控除額(最高50万円)}× 1/2

 

1)必要経費

必要経費は、その収入を生じた行為をするため又はその収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限り計上することができます。

 

2)特別控除額

総収入金額から必要経費を控除した残額に対して、最高50万円まで控除することができます。

残額が50万円に満たない場合は、その金額が特別控除額になります。

 

3)損失が生じた場合

一時所得の計算上、損失が生じた場合(必要経費の合計額が総収入金額より大きい場合)は、他の所得から損失分を控除することができません(損益通算不可)。

なお、一時所得が複数ある場合には、一時所得同士で内部通算します。

 

4)1/2課税

一時所得の金額は、事業所得や不動産所得、給与所得などの他の所得と合算して総所得金額を計算します。

総所得金額を計算する際、一時所得は1/2に相当する金額が合算対象になります。

雑所得

雑所得とは

雑所得とは、他の9種類の所得(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得)のいずれにも該当しない所得をいいます。

どれにも分類できないものが雑所得になるイメージです。

雑所得の具体例

次のようなものが雑所得になります。

  • 定期積金の給付補てん金
  • 還付加算金
  • 生命保険契約の年金

次のようなものは事業(商売)として行っていれば事業所得、副業など事業以外でやっている場合は雑所得になります。

  • 動産の貸付(友人に車を貸す)
  • 原稿料や印税(作家以外の人)
  • 貸付金の利子(友人に対するもの)
  • 5年以内の山林の譲渡(林業以外)

また、次に掲げる年金は、公的年金等として雑所得になります。

  • 国民年金、厚生年金
  • 恩給(一時恩給を除く)
  • 企業年金等

雑所得の計算方法

  1. 公的年金等の収入金額 - 公的年金等控除額
  2. 総収入金額 - 必要経費
  3. 1 + 2 = 雑所得の金額

1)公的年金等控除額は、公的年金等の収入金額に応じた経費の概算控除です。

公的年金等控除額

2)損失が生じた場合

雑所得の計算上、損失が生じた場合(必要経費の合計額が総収入金額より大きい場合)は、他の所得から損失分を控除することができません(損益通算不可)。

なお、雑所得が複数ある場合には、雑所得同士で内部通算します。

一時所得と雑所得のまとめ表

一時所得 雑所得
イメージ たまたま発生した臨時収入 他に分類できない所得
具体例 懸賞の賞金品

競馬などの払戻金

保険の一時金、損保の満期返戻金

法人から贈与された金品

遺失物拾得者が受ける報労金

立退料

定期積金の給付補てん金

還付加算金

生命保険契約の年金

副収入

公的年金

計算方法 (収入 - 必要経費 - 特別控除額)× 1/2 1.公的年金等の収入- 公的年金等控除額

2.収入 - 必要経費

3.1 + 2 = 雑所得の金額

損益通算 損益通算不可 損益通算不可

外れ馬券訴訟

余談ですが、一時所得と雑所得に関する税務訴訟についてご紹介します。

昨年、外れ馬券の購入費が経費に算入できるか否かが争われた税務訴訟が話題になりました。

競馬予想ソフトを駆使して大量の馬券を購入し、多額の払戻金を受けた場合、所得税の確定申告で外れ馬券を経費にできるのかどうかという内容です。

競馬の払戻金が「一時所得」なのか、「雑所得」なのかが争点になった事案です。

どちらの所得区分に分類されるのかによって、経費の考え方が変わってくるためです。

判決の詳細な内容については割愛しますが、一時所得と雑所得を区分するのは難しいと分かる事案です。