これから税理士試験を受けようと考えている人の中には、独学で勉強しようと思っている人もいるのではないでしょうか?
特に日商簿記2級に独学で合格した人は、このままの勢いで税理士試験も独学で行けるんじゃね?と思っているかもしれません。
その心意気は大変すばらしいのですが、少々危険でもあります。
税理士試験を受験してきた先輩として、注意喚起させていただきます。
簿記論や財務諸表論であれば、独学でもワンチャンあるかもしれませんが、税法科目であればかなり厳しいです。普通の人には無理ゲーです。
わざわざそんな困難な道を選ばなくても良いのではないかと思ってしまいます。
これから、なぜ独学をおすすめしないのか理由を説明していきます。
目次
独学の定義
今回の記事では、独学とは「資格学校に通学せずに勉強している人」と定義させていただきます。
最近は、資格学校の授業をインターネット上で受けることができますが、今回の記事では通信生についても独学に分類します。
たとえ通学生と同じ教材で勉強していたとしても、私の中では通信生は独学です。
なぜなら、通信生は勉強スケジュールやモチベーション管理などの面で、通学生よりもかなりのハンディを抱えているからです。
到底同じ条件とは考えられません。
独学をおすすめしない理由
独学の合格率は低い
税理士試験の合格率は各科目だいたい10%くらいです。10人に1人しか合格できない厳しい試験です。
ところが、資格学校では、上位30%をキープしていれば合格できると言うのが通説になっています。
資格学校で勉強していると、答練と言う模試みたいなものを受けるのですが、講師からは上位30%を目標にしてくださいと言われます。
勉強を始めた頃の私は、何を言っているんだ?税理士試験の合格率は10%なのに、上位30%じゃ受かるわけないじゃないかと思っていました。
勉強を進めていくにつれてだんだん意味が分かってきたのですが、税理士試験を受験する人で資格学校に通学して勉強している人の割合はそれ程高くなかったのです。
通学していない人のレベルは通学生に比べて低いため、通学生の中で上位30%にいれば、税理士受験生全体の中では上位10%に入ってしまうということでした。
確かに、実際に受験してみてもその通りだと感じました。税理士試験の表面上の合格率は10%ですが、ちゃんと勉強している人の合格率はもっと高いです。
試験を受けに来る人の中には、合格する見込みのないいわゆる記念受験の人も結構な数含まれています。
通学生の合格率が30%あるということは、独学の人の合格率は10%もないということです。
このことからも、独学で合格するのがいかに難しいかが分かると思います。
モチベーションの維持が難しい
税理士試験は長丁場の試験です。税理士試験は毎年8月に行われ、1年に1回しか実施されません。ありがとうございました。
受験生は1年かけて税理士試験の勉強をして、試験に臨むというサイクルになっています。
税理士試験に挫折する最大の要因は、自分自身のモチベーションの低下です。
頭が悪いから試験に落ちるのではなく、モチベーションが低下して勉強できなくなったから落ちるのです。
私と同じ時期に勉強を始めた税理士受験生の仲間も、多くの人が税理士試験から撤退していきました。
なかには私よりも成績が良い人もいました。勉強を続けていたら確実に合格していたと思っています。
でも途中で勉強を続けられなくなってしまったのです。
勉強を辞めてしまった本当の理由はわかりませんが、おそらく勉強するモチベーションがなくなってしまったのではないかと思います。
税理士試験の勉強を始めた頃は、合格という目標があまりにも遠すぎて、どれだけ勉強したら合格までたどり着けるのか見えません。
税理士試験は分量が多いので、2~3か月勉強したくらいでは合格レベルに達することなんてできません。
なので、だんだんしんどくなってくるのです。
通学生でもそんな感じです。
独学で勉強していたら、より強靭なメンタルが必要になるのは間違いありません。
勉強のペースがつかみにくい
独学の何がきついかというと、全て自分で管理しなければいけないことです。
通学生だとカリキュラムが決まっているので、勉強のペースを保ちやすいです。勉強に対する強制力が働きます。
独学の場合は、自分で勉強のカリキュラムを決めて実行していかないといけません。
勉強をしなくても何も言われないため、自分で自分自身を律していく必要があります。
2~3か月であれば、勢いに乗ればモチベーションが高いまま突っ走れるかもしれません。
ところが、税理士試験ではそういう訳にはいきません。2~3か月頑張ったくらいでは結果は出ません。
結果が出ないとモチベーションを維持するのがだんだん難しくなってきます。
税理士試験の勉強はしんどいです。いずれ壁にぶち当たる日がきます。
その時に、果てして一人で乗り切れるでしょうか?
通学生であれば、モチベーションが低くても授業に行けば最低限インプットすることはできます。
人間モチベーションには波があるので、継続して勉強していればそのうちモチベーションは回復してきます。
独学でモチベーションが低下してしまうと、勉強自体を止めてしまい、勉強に戻れなくなるパターンが多いです。
どうしても、独学だと通学生に比べて勉強を続けていくのが難しくなります。
独学は時間がかかる
独学は、一言でいってしまえば非効率です。
合格までに必要な勉強時間は、通学生よりも確実に長くなります。
税理士試験の勉強は、普段馴染みがない分野の勉強になります。
聞いたこともない用語や論点がたくさん出てきます。
簿記の勉強をしていても、なんでこんな計算をするのか意味が分からないという問題が出てきます。
解答を見てもよく分からないこともあります。
そんなときは、資格学校の講師に質問して教えてもらうのが一番手っ取り早いです。
通学生であれば、授業に行ったついでに質問することができます。これは通学生の大きなメリットです。
税理士試験は出題範囲が広いし、理解していないと答えられない問題が出題されるので、暗記だけで乗り切ることはできません。
暗記だけでなんとかなるのであれば独学でも大丈夫ですが、理解まで求められると独学ではきつくなってきます。
独学はアウトプットの訓練が難しい
税理士試験で合格するためには、インプットよりもアウトプットが大事になります。
特に簿記なんかでは顕著なのですが、アウトプットの訓練をしないと絶対に問題を解けるようになりません。
これだけは断言できます。授業を受けているだけでは絶対に合格できません。
資格学校の授業でも、直前期になってくるとほとんどアウトプットのトレーニングになります。
答練を通して問題演習を行うことになります。
実際の答練では、時間を計って、緊張感のある中で問題を解いていくことになります。
最初の内は答練を受けてもなかなか点数が取れないので精神的にきついのですが、頑張ってくらいついていくと、いつの間にか合格できる実力が身についています。
合格レベルに達するためには、答練は避けては通れません。
通学生であれば答練がカリキュラムに組み込まれているので、スケジュール通りに受講していれば、自然と答練に入っていけます。
ところが、通信生だとそういうわけにはいきません。
通信生の場合、アウトプットの訓練はすべて自分自身でやらないといけません。
自分で答練のカリキュラムをこなしていくのは、めちゃくちゃきついです。
インプットの授業であれば受け身でもなんとかなりますが、アウトプットの訓練は受け身ではできません。
自分一人の状況で、時間を計って緊張感を持ちながら問題演習できるでしょうか?
しかも最初の内は、ほとんど点数がとれません。ボロボロになります。
よほど強靭なメンタルがない限り、最後までモチベーションを維持することなんてできません。
私が通信生だとしたら、絶対無理だと思います。
通学できない場合は通信を利用しよう
地理的な問題や、仕事の関係で通学して勉強することができない人も中にはいらっしゃることと思います。
どうしても通学できない場合は、通信での受講をおすすめします。
今は、資格学校の授業をインターネット上で受けることができるため、通信で受講していれば情報量で通学生に劣るということはありません。
インターネットだと、時間や場所に関係なく授業を受けられるので、通学生よりも便利な面もあります。
私は通学生でしたが、授業に行けないときはインターネットの授業を活用していました。
通信をおすすめする大きな理由に、市販の教材がへぼいということがあります。
税理士試験の市販の教材は、それほど多くありません。税法科目に至っては、市販の教材を見つけることすら困難です。
大きな本屋に行けば税理士試験用の教材はありますが、資格学校の教材の質に比べると劣っていると言わざるを得ません。
資格学校の教材は、その道のプロが作っているだけあって良くできています。
試験に合格することを考えた場合、市販の教材では大きなハンディになってしまいます。
また、文字だけの教材で勉強していても、内容を理解するのは非常に難しいです。
講義形式でインプットしていった方が、どう考えても効率的です。
独学で成功できるのは少数派
独学で税理士試験に合格している人もなかにはいます。
大学受験のときでもそうでしたが、独学で難関大学に合格できる人もいます。
ただし、そんな人は例外です。
独学で合格するためには強靭なメンタルが必要になります。独学の方が勉強を続けていくための精神力が求められます。
資格学校に通うとなるとお金がかかります。税理士試験は科目数が多いため、結構な出費になります。
しかし、資格学校に通って勉強することで、受験期間が短くて済むのであれば、自分自身への投資だと思ってお金を使った方が良いです。
合格が1年遅くなったら、その期間に機会損失が発生します。
1年でも早く税理士になって、実務についた方が良いと思いませんか?
税理士試験に本気で合格したければ、通学生になることをおすすめします。
合格するためには、勉強を続けていける環境を整えるのが近道だからです。