私は独立する直前の3年間、BIG4税理士法人で働いていました。BIG4税理士法人は、会計業界で人気の就職先です。
BIG4税理士法人は、社風、業務内容等が特殊で、一般的な会計事務所とは環境が大きく異なります。
実際に働いて感じたBIG4税理士法人の特徴をまとめてみました。会計事務所への就職・転職を考えている方の参考になれば幸いです。
※ 私はコンプライアンス部門(主に申告作業を行う部署)に所属していたため、当記事は、コンプライアンス部門を前提としております。部署が違うと、雰囲気や仕事内容が全く違う場合もあるのでご注意ください。
BIG4税理士法人とは?
BIG4税理士法人とは、以下の4つの税理士法人のことをいいます。
世界規模で展開している国際会計事務所のメンバーファームで、BIG4と呼ばれています。
社風
イメージは、外資系企業のような社風です。
成果主義です。年齢は関係なく、個々のパフォーマンスで評価されます。長時間働けば評価されるということはなく、時間対効果で評価されます。
評価についてはかなりシビアです。結果さえ出せば、労働時間はとやかく言われません。
フレックスタイム制、在宅ワーク、育児休暇、時短勤務、フリーアドレス制といった、柔軟な働き方を積極的に取り入れようとする風土があります。風通しはいいです。
働き方
BIG4税理士法人は、繁忙期と閑散期の差が激しいです。季節労働者的な働き方になります。
BIG4税理士法人のコンプライアンス部門では、12月頃から6月くらいまでが繁忙期になります。申告シーズンが忙しくなります。
外資系企業は12月決算、日系企業は3月決算が多いため、どうしても冬や春に業務が集中します。繁忙期は、残業が多くなりますし、場合によっては休日出勤しなければならないこともあります。
近年は、残業制限についてかなり厳しくなっているので、昔に比べると残業時間は減少傾向にありますが、事業会社に比べると労働時間はかなり長いです。
ワークライフバランスを重視する方にはあまりおすすめできない働き方です。
一方、8月から10月頃までは閑散期になります。閑散期は長期休暇が取りやすいです。
1ヶ月くらいの長期休暇を取る方もいますし、税理士試験の試験休暇を取得される方もいます。
人材
BIG4税理士法人で働いている方は、優秀な方が多いです。今までの職場にも優秀な方はたくさんいましたが、BIG4税理士法人はダントツに多いです。
長く働いている方は、ワーカホリックタイプが多いです。極端に言えば、仕事が趣味みたいな方たちです。
一刻も早く家に帰りたいニート気質の私とは対極をなしている方たちです。
銀行時代は「仕事が好きすぎて家に帰りたくない」というタイプの人は見たことがなかったので、入社してとても驚きました。
BIG4税理士法人の業務は、高度で細分化されていますので、この分野はこの人に聞けという歩く百科事典みたいな方もたくさんいます。
働いている方は20代後半から40代半ばくらいの方が多いです。税理士試験の勉強をしてから入社する方が多いため、新卒入社はほとんどおらず、ほぼ中途入社です。
仕事内容
BIG4税理士法人のコンプライアンス部門では、申告書の作成や税務相談が業務の中心になります。
コンプライアンス部門の中でも、金融や不動産のように専門的な知識が必要となる業種は、別々の部署になっています。
クライアントは日系の大手企業やその関係会社、外国法人が中心です。中小の会計事務所では滅多に登場しない、外形標準課税、連結納税、事業所税なんかもばんばん出てきます。
基本的に、記帳代行や決算業務は行いません。期中の処理はクライアントが行います。会計が締まった段階で資料を提供いただき、クライアントの資料を元に税務調整を行い、申告書を作成していきます。
企業規模が大きいクライアントが多いため、税務調整は複雑になります。税務調整が多くて、別表5(1)が3ページに及ぶこともよくあります。資格学校のテキストに載っている税務調整は一通りでてきます。
クライアントは、チームで担当します。3名~5名くらいが多く、規模の大きいクライアントの場合はそれ以上になることもあります。
スタッフ、シニアスタッフ、マネージャー、パートナーと各階層のメンバーが含まれます。マネージャー以上は、マネジメントが仕事の中心になりますので、申告書作成などの手を動かす仕事はスタッフ、シニアスタッフが中心になります。
出向
BIG4税理士法人では、取引先のクライアントに出向するケースがわりとあります。常駐するケースや、ローンスタッフ(派遣)でニーズに応じて、定期的にクライアント先で仕事することがあります。
私はBIG4税理士法人での最後の半年間は、某一部上場メーカーに常駐し、経理部の一員として働かせていただきました。大企業の税務に携わらせていただき、貴重な経験をすることができました。
他の会社で仕事をするチャンスがあるのも、BIG4税理士法人の特徴です。
退職後のキャリア
BIG4税理士法人では、終身雇用や年功序列の考え方はないため、多くの方は定年を迎えることなく、退職して次の道に進むことになります。
転職を選ぶ方が多いです。独立する方はそう多くありません。
独立を選んだ自分が言うのもなんですが、BIG4税理士法人の業務は独立に向いているとは言えません。中小企業向けの税務に携わる機会は、どうしても少なくなりますからね。
転職先は、他の会計事務所、日系の上場企業、外資系企業とさまざまです。業界は違えど、会計や税務の経験を活かして専門職として転職するのが一般的です。
採用
BIG4税理士法人では、税理士試験3科目以上合格が採用の目安になります(現在は売り手市場のため2科目でも可能性があります)。
BIG4税理士法人は、未経験者を採用してゆっくり育てていこうという環境ではないため、即戦力が求められます。
法人税法や消費税法の知識や経験があるとアピールになります。法人税と消費税の知識は、業務を行う上で必須です。
30代前半までで、税理士試験にある程度科目合格している方が採用されている印象です。学歴は関係ありませんが、結果的に高学歴の方が多いです。
ちなみに、私の入社時のスペックは以下のとおりです。
年齢:30歳
資格:税理士有資格者(登録未了)
英語:TOEIC670点。仕事で英語を使った経験なし。英語は話せない。
経験:銀行で3年、中小税理士法人で1年半の社会人経験。簡単な申告書は作ったことがある。
PCスキル:可もなく不可もなく。
社内用語
横文字の社内用語が多用されます。他の会計事務所から転職される方は、最初とまどうと思います。例えば、以下のようなものです。
用語 | 意味 | 使い方 |
Visit | クライアントを訪問すること | びじっと何時からやっけ |
TR | Tax Returnの略。確定申告書、申告作業 | 今月てぃーあーる10件あるわ |
Prepare | 調書を作成すること | パイセンぷりぺあが完了しました |
Review | 調書を上席者がチェックすること | パイセンれびゅーおなしゃす |
On call | 税務相談 | またおんこーるかよ |
同僚に「今からvisitに行ってくるわ」と言いだしたら、組織に染まりだした証拠です。
BIG4税理士法人に向いている人
最後に、私の主観でBIG4税理士法人に向いている人を列挙しておきます。
- 若いうちに早く成長したい
- 大企業向けの高度な税務を経験したい
- 体力に自信がある
- 英語を使って仕事がしたい
- 独立ではなく組織で働きたい
- 待遇が良い事務所で働きたい
- 優秀な方が多くいる環境で働きたい
逆に、早く家に帰りたいニート気質の人には向いていないかもしれません(笑)
あとがき
実名で記事を書き、プロフィールに職歴を公表している関係であまり過激なことは書けませんでした。もっとディープな話が聞きたい方は、直接お会いした時にこっそり聞いてください。
(注)当記事は、2018年8月現在の情報を元に作成しています。時間が経つと状況が変わる可能性がありますのでご注意ください。