税理士を目指すのは今がチャンス【受験者数減少・平均年齢60代】

税理士を目指すのは今がチャンス

2018年に行われた税理士試験のデータを見てみたところ、予想通り今年も受験者数が減少していました。

ここ数年ずっと受験者数が減少しています。

税理士業界に身を置く者としては、心配になるデータです。

でも実は、税理士業界は若手が少なく受験者数も減っており、これから税理士を目指す人にとっては今がチャンスなのです。

税理士試験の受験者数減少

受験者数が大幅減

税理士試験の受験者数は年々減少傾向にあり、税理士の合格者数も右肩下がりとなっています。

下の表は、2018年に行われた第68回税理士試験受験者数のデータです。

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前年比93.4%となっており、受験申込者数が前年よりも2,717人減少しています。

私が受験した第64回の受験申込者数は49,876人でした。

この4年で受験申込者数が11,351人も減少しています。

ここ数年は景気がよかったので、景気の影響もあるかもしれません。

景気がよくなると一般企業への就職の人気が高まり、景気が悪くなると資格試験の人気が高まるという傾向があります。

どこへでも就職できるという状況であれば、わざわざ資格試験の勉強をしようなんて思わないですよね。私もそう思います。

しかし、この受験者数の著しい減少は景気うんぬんで片づけられるような話ではありません。

税理士の人気が下がっていることは否定できません。由々しき事態です。

空前の売り手市場

若い税理士が少ないことや受験者数が減少していることは、これから税理士を目指す人にとってはチャンスでもあります。若くして税理士になるだけで希少価値がでます。

 

ここ数年の会計業界の就職状況を見ていると、かなりの売り手市場になっています。

どこの会計事務所でもなかなか職員を採用することができず、大変なようです。

一昔前まではBIG4税理士法人に就職しようと思うと、税理士試験に3科目合格していることは必須でした。簿財と法人税を持っていて、ようやく勝負の土俵に立てるといった状況でした。

しかし、最近では簿財しかない人でも、積極的に採用しているという話を聞きます。

法人税を持っている人しか採用しないとか言っていたら、誰も採用できないからです。

明らかに、会計事務所での採用基準は下がってきています。

関連記事>>>BIG4税理士法人の特徴【就職・転職】

 

税理士資格を持っていると転職もしやすいです。

税理士資格があれば、余程のことがない限り、どこかでは雇ってもらえます。

資格があるだけで、働き方の自由度はかなり高くなります。

関連記事>>>税理士資格のメリットは選択肢が増えること。合格すれば可能性が広がる

税理士業界は超高齢化

日本は少子高齢化が叫ばれて久しいですが、税理士業界は、日本の高齢化の状況とは比べものにならないほど超高齢化社会です。

税理士の平均年齢は、なんと60代です。今後、税理士事務所の事業承継や廃業は、増加していくことが予想されます。

税理士の平均年齢は60代

税理士業界は高齢化が深刻です。税理士の平均年齢は60歳を超えています。

少し前のデータになりますが、日本税理士会連合会が行った平成26年1月1日時点の調査では、税理士の年齢層は下記のようになっています。

税理士 年齢層

区分 割合
20代 0.6%
30代 10.3%
40代 17.1%
50代 17.8%
60代 30.1%
70代 13.3%
80代 10.4%

60代以上で全体の53.8%を占めています。上場企業に勤めている人の平均年齢は、約40歳です。他の業界と比べると、いかに税理士業界が高齢であるかがわかります。

 

高齢になっている理由は、国税庁や税務署のOB(以下国税OB)で退官後に税理士登録する人が多いためです。

税理士になるには、税理士試験に合格する以外にもいろいろなルートが用意されています。その一つが国税OBになります。正確な数字はわかりませんが、税理士の30%は国税OBと言われています。

 

20代や30代の税理士は、極めて少ないです。

20代の税理士はたったの0.6%しかいません。20代の税理士を探すのは、はぐれメタルを仲間にするのと同じくらい難しいのです。

30代の税理士ですら約1割です。若いというだけで差別化できてしまうおそろしい状況です。税理士会の行事に参加しても、34歳の私ですら最年少クラスです。

30代半ばであっても税理士業界の中では超若手の部類です。30代以下の開業税理士なんて、ほとんど存在しません。

税理士業界では、40代でも若手の部類です。他の業界からしたらありえないでしょう。

税理士の高齢化問題

税理士には定年がないので、働こうと思えば一生働くことができます。生涯現役の方も多数いらっしゃいます。

確かに制度上は、定年はありません。しかし、現実的に一生働けるのかというとかなり厳しいと思います。

 

税法は毎年改正があります。改正があれば、最新の税制をキャッチアップしていかないといけません。

税制は年々複雑になっています。経済環境が複雑になるにつれ、税制も複雑になっていくからです。

例えば、2019年には消費税率が10%へ引き上げになり、軽減税率制度が実施されることになります。

関連記事>>>消費税率10%への引き上げによる、経理のポイント

最新の税制を理解するのは、かなりの労力が必要になります。年齢を重ねるにつれ、新しいことを覚えるのはより大変になっていきます。

 

ITの技術も日進月歩で進化しています。60歳を超えてPCやスマホを使いこなせている方は、そう多くないでしょう。税金以外の部分で苦戦する可能性も大いにあります。

 

高齢の税理士は、現場から離れ事務所のマネジメントを中心に行っている場合が多いです。後継ぎがいる事務所であれば、世代交代できるので問題ありません。

しかし、若い税理士の絶対数は少ないです。後継ぎがいない税理士事務所は全国に相当数あるものと思われます。今後10年以内に廃業する税理士事務所は、かなりの数にのぼると予想されます。

 

若い力がいない業界は、いずれ衰退します。

新規参入者が少なければ、すでに税理士である者の既得権益は守られます。

すでに税理士である私にとっても、若い税理士が少ない方が有利なのは間違いありません。

でもこれは短期的な視点です。長期的にみれば人材が高齢化していくのはマイナスです。

若い世代の新しい考え方が入ってこないと、業界が進化していくことはありません。

税理士業界に身を置いていると、やり方が古臭いなと思うことが多々あります。

税理士業界には、まだまだ変革の余地がたくさんあります。

税理士を目指すのは今がチャンス

税理士はAIでなくなる?

巷では、税理士は将来AI(人工知能)に取って代られて、なくなるのではないかと言われています。

「AIで消える職業ランキング」なんていう記事を目にされたこともあるのではないでしょうか。

その中でも、税理士は消える職業の筆頭です。

果たして、本当に税理士はAIによってなくなるのでしょうか?

 

確かに、AIによって税理士の仕事内容は大きく変わるはずです。

AIによって税理士の仕事がなくなると言えなくはありません。

しかし、これは語弊のある表現です。正確に言えば、従来の税理士業務がなくなるということです。

レシートから仕訳を入力するといった手作業でやっている単純な仕事の話です。こういう仕事は、将来確実になくなるでしょう。

でも、国家が税金で運営されていく限り、税金に関する仕事はなくなりません。

経済が発達するにつれ、税金に関する取扱いは日々複雑になっています。

高度な税務判断を要する仕事へのニーズは、極めて高いです。

国際税務のような分野はこれからますます重要になっていくと考えられます。

これから税理士になる人は、国際税務のような分野で活躍できる可能性が大いにあります。

 

税金の世界には、白とも黒とも言えないグレーゾーンが存在します。

グレーゾーンをどのように判断し、税務処理を行っていくか。ここが、税理士の腕の見せ所になります。

画一的に判断できない問題があるからこそ、税理士の存在価値があると言えます。

 

今後、税理士の働き方は多様化していきます。今が税理士業界の過渡期ともいえます。

従来の税理士観にとらわれない税理士の方が、チャンスをものにできる可能性は高いでしょう。

若い人の方が柔軟な発想ができるので有利です。

現在の状況を逆にチャンスと捕らえて、税理士に挑戦してもらいたいです。

税理士の高齢化は新規開業者に追い風

税理士業務は、顧問契約を結ぶ形態が一般的です。一度顧問契約を結ぶと継続的な取引関係になります。顧問税理士はそう頻繁に代わるものではありません。

 

税理士が新規に開業するとなったとき、すでに顧問税理士がいる会社から顧問契約を獲得するのはなかなか難しいです。多くの会社はすでにどこかの税理士と顧問契約を締結しており、関係性も固定化しています。

新規開業者の最初のハードルは、いかにお客様を見つけるかということです。

 

私は税理士の高齢化はチャンスと考えています。これから税理士事務所の事業承継は、間違いなく増えていきます。

事業承継のタイミングは、固定化していた顧問税理士の関係が揺らぐ可能性があります。

 

税理士とお客様の関係性は、相性に左右されることが多いです。人によって相性は当然あります。代替わりしたら関係がうまくいかなくなる可能性も十分あります。

後継者がいないため税理士事務所を廃業するケースも増えるはずです。そうなれば会社は新しい顧問税理士を探さないといけません。

これからの10年で顧問税理士の流動化が進む可能性は高いです。

何の基盤もない新規開業者であっても、顧問先を獲得していけるチャンスは十分あると考えています。