税理士試験の簿記論に一回で合格したいと考えている方へ。
私は、簿記論は3回目の受験でようやく合格することができました。税理士試験の中で簿記論が一番苦戦しました。なぜ簿記論に苦戦したのかというと、簿記論の試験の特徴が分かっていなかったからです。簿記論は癖の強い科目のため、問題の解き方を間違えると、合格できる実力があっても合格することはできません。
私は、試験に落ちたことを反省し、簿記論の分析を行い、試行錯誤を重ねました。そして一つの結論を導き出しました。
今回は、私の受験経験をもとに編み出した「簿記論を一回で合格するための攻略法」を伝授したいと思います。
目次
簿記論の受験歴
まずは、私の簿記論の受験について振り返ってみます。私は簿記論の勉強を始める段階で、日商簿記検定1級に合格していました。簿記論は日商簿記1級と同程度の難易度です。なので、勉強を開始したときにはすでに十分簿記論に合格できる実力はあったと言えます。結果的には、中途半端に簿記の実力があったことが慢心につながり、受験回数が長くなってしまいました。
1回目の受験では、ほぼ何の対策もしないまま試験本番に臨みました。簿記論と日商簿記では、同じ簿記の試験とはいえ試験形式は全く違います。TOEICと英検くらい違います。対策をせずに受験するのはさすがに無謀でした。あっけなく落ちました。
2回目の受験では、過去問だけ解いて試験に臨みました。試験形式に慣れることはできましたが、1年間のブランクによって計算能力が大幅に低下していました。あえなく落ちました。
3回目の受験では、心を入れ替えて大原の簿記論を受講しました。授業の内容はほとんど知っている内容だったため目新しさはありませんでしたが、毎回授業を受けて計算問題を解く習慣ができたことで、日商簿記1級に合格した当時の実力を戻すことができました。なんとか無事合格することができました。
振り返ってみると、ずいぶん遠回りをしてしまったなと思います。1回目の受験のときに、ちゃんと過去問を解いて試験対策をしていれば合格できていたはずです。その時は、簿記論の攻略法が分かっていませんでした。簿記論は、問題の解き方で合否が決まる試験だったのです。
簿記論の特徴
簿記論の特徴は次の3つです。
- 時間が圧倒的に足りない
- 問題の難易度が異常に高い
- 合格点が異常に低い
これらの特徴を理解することが、簿記論合格への一歩です。
一つずつ確認していきます。
時間が圧倒的に足りない
簿記論の試験時間は2時間ですが、2時間で全ての問題を解き切るのは不可能です。倍の4時間あったとしても解き切ることはできないでしょう。問題量はめちゃくちゃ多いです。そもそも全ての問題が解けるように、試験問題は作られていません。
税理士試験は競争試験のため、上位10%に入らないと合格できません。落とすための試験です。受験生の間で差が出るように、問題量が多くなっています。
簿記論を受験する上で一番大切なポイントなのですが、簿記論は「問1から問題を解いてはいけません」。問題全体を見渡して、解ける問題だけを解いていくことを意識しないといけません。問1から順番に解いていたら、最後の方に簡単な問題があったとしても、解けないまま時間切れになってしまいます。
問題の難易度が異常に高い
簿記論の試験問題の難易度は、他の簿記の試験と比べても異常に難易度が高いです。日商簿記1級の試験問題よりもはるかに難しいです。試験問題の難易度だけだと日本で一番難しいです。
ただし、試験問題が難しいからといって過度な心配は不要です。試験問題の難易度と合格の難易度は全くの別物です。
簿記論の問題の難易度は全体的に高めですが、難易度が低い問題も当然あります。難易度が低い問題を取りこぼさなかったら十分合格できます。
合格点が異常に低い
簿記論の合格点は異常に低いです。試験問題の解答や配点は公表されていないため、資格学校が発表しているデータで判断することになりますが、50点取れていたら間違いなく合格できます。
私が合格した年の資格学校が発表していた合格ボーダーラインは40点を切っていました。
合格ボーダーラインが40点てやばくないですか?トップ10%の人でも40点しか取れない試験です。平均点なんて10点台かもしれません。
簿記論の戦略
先ほど見てきた簿記論の特徴を踏まえて、どのような戦略を取るべきなのか考えていきます。簿記論では50点取れたら十分合格できるので、どうやって50点を取るのかがポイントになります。私は、試験問題の6割を解いて、解いた問題の正答率は8割を目指す方法を取っていました。
この方法だと大体50点くらいになります。この方法でカギになるのが、次の2点です。
- 解く問題の取捨選択
- ケアレスミスを減らす
解く問題の取捨選択
限られた時間の中で、効率良く点数を取るには、手をつける問題を絞り、一度手をつけた問題は必ず正解することが大切です。
試験が始まったら、問題を解きだす前に、全ての問題に目を通します。多少時間がかかっても構いません。隣の人が電卓を叩きだしても無視です。動揺してはいけません。解けそうな問題の見極めを行い、解く順番を決めてから、問題を解きだします。優先順位が高いのは、簡単な問題ですぐに解答できる問題です。こういう問題から解いていくと試験中焦らなくて済みます。
簿記というものは、解ける問題は勝手に手が動いていきます。手が止まるようだったら、見切りをつけて次の問題に行った方が良いです。
ケアレスミスを減らす
ケアレスミスには十分注意が必要です。簿記論の戦略は、限られた問題だけを解くというものなので、ケアレスミスをするようだと戦略が破綻します。
ケアレスミスを減らすためには、いつも同じ解き方をするというのがポイントです。下書きの書き方や問題用紙へのメモのやり方など、普段から問題を解く中で自分がミスをしにくい方法を研究しておきましょう。
時間を計って解く答練が、一番自分の癖を知るのに良いです。緊張感のある状態で問題を解かないと、自分の弱点は見えてきませんからね。答練を何回か受けてみると、電卓のミスが多いとか、集計ミスが多いとか改善点が見つかるはずです。
「目利き能力」を高める勉強をする
簿記論に合格するためには、解ける問題だけを解いていくことが不可欠です。そのためには、問題に対する「目利き能力」を高めることが必要です。
目利き能力とは、問題をぱっと見ただけで解ける問題と解けない問題を瞬時に判断する能力のことです。簿記論は時間が全然足りないので、問題を解いてみてからやっぱり解けないので次の問題に行こうという解き方をしていては、時間がなくなってしまいます。
本来解かないといけない問題なのに、時間がなくなって手つかずで終わってしまったというのが一番まずいです。一度手を付けた問題は、絶対に答えまで出さないといけません。ここが簿記論の試験で一番難しいところです。
簿記論の本試験では、必ず見たことがない初見の問題が出題されます。このような問題に適切に対応できるかによって運命が決まります。出題形式がひねってあるだけで簡単に解ける問題なのか、スルーしないといけないトラップなのか。判断を誤ると足元をすくわれます。
初見の問題は、普段から「目利き能力」を養っておかないと対処できません。
それでは、どうしたら「目利き能力」を高めることができるのでしょうか?普段の勉強で意識した方が良いのは次の2点です。
- 基礎を徹底的に固める
- 答練で上位をキープする
基礎を徹底的に固める
簿記論に合格するためには、難しい問題を解ける必要はありません。誰でも解ける問題を確実に得点するだけで十分合格できます。
難しい問題を解けたとしても、傾斜配点がかかるので差はつきません。難しい問題を解くのはコスパが悪いです。逆に簡単な問題を落とすとダメージは大きいです。
資格学校の教材に出てくる基礎問題は必ず解けるようにしておきましょう。簡単な問題を間違うと致命傷になるので、基礎問題だけは穴があったらダメです。普段から基礎は徹底的に固めておかないといけません。
答練で上位をキープする
「自分が解けない問題は、他の人に解けるはずがない」少し傲慢に聞こえるかもしれませんが、この自信は非常に大切です。
自信を持つためには、日頃から少しずつ結果を積み重ねていくことが必要です。答練は必ず上位に入るつもりで真剣に取り組みましょう。目標は上位30%に入ることです。
簿記論の戦略のところでも書きましたが、簿記論では試験問題の6割を解いていくことになります。試験問題の6割を解くというのは、言い換えれば、試験問題の4割は切り捨てるということです。自分に自信がないと4割切り捨てるというのはなかなかできません。
問題に対する感覚を磨くには、自分の実力と他の人の実力を客観的に判断できるようにならないといけません。そのためには、答練で上位をキープすることが極めて重要です。
普段、自分の実力を知る機会は答練しかありません。答練で結果が出ないと次第に自信がなくなり、やる気にも影響してきます。答練は練習試合みたいなものですが、決して手を抜いてはいけません。答練で結果を出し続けることしか、自信をつける術はありません。
実力者ほど簿記論の罠にはまりやすい
普段実力がない人が、ふたを開けてみると試験に合格していたということがあります。この人は結果的に、自分の解ける問題だけを解くという解き方が出来ていたため合格することができたことになります。実力がないと問1から順番に問題を解き始めても難しい問題には手も足もでないため、時間が余って結局最後の問題までたどり着いてしまったというパターンです。
一方、答練では毎回上位にいるのに落ちてしまう人がいます。簿記論は、実力者ほど注意して問題を解かないといけません。
実力者でも落ちてしまうのは、いろいろな問題が解ける実力があるが故に、解いてはいけない問題にまで手を出してしまって、本来解かないといけない問題を解くことができなかったからです。実力者であっても問1から順番に解き始めると、確実に最後の問題までたどり着きません。解き方を間違うと実力があっても合格することはできません。
簿記論に関しては、完答することを求めてはいけません。部分点を積み上げるイメージです。
「簿記論を一回で合格するための攻略法」まとめ
簿記論に合格するためには「目利き能力」を身に付けることが最大のポイントです。簿記論の特徴を理解して、普段から勉強に取り組んでいくことが簿記論合格への近道です。
実力があるのに合格できないのは本当にもったいないです。簿記論は「問題の解き方で合否が決まる試験」ということを意識しましょう。忘れそうな人はテキストの表紙に書き込んでおくと良いかもしれませんね。