源泉所得税は、非常にわかりにくく頭を悩ます業務の一つです。
しかも、計算を間違えるとあとからペナルティを受ける可能性があるため、怖い論点になります。
今回は、源泉所得税の実務で間違えやすい「士業の源泉所得税の取扱い」について確認していきます。
税理士と税理士法人では源泉徴収の取扱いが違う
事業を行っている場合、何かしらの形で税理士と契約していることが多いのではないでしょうか。
定期的に税理士と会っている経営者の方は多いことと思います。
税理士に仕事を依頼すれば、税理士に報酬を支払わないといけません。
税理士に対して報酬を支払う場合は、原則として源泉徴収が必要になります。
さらっと書きましたが、「原則」というのは実に厄介な表現です。
原則という書き方をしているということは、例外もあるということです。
なかには源泉徴収しなくてもよい場合があるということですね。
どういう場合に源泉徴収が必要で、どういう場合だと源泉徴収が不要になるのか、きちんと判断できているでしょうか?
何気なく処理をしていると、思わぬ落とし穴にはまってしまうかもしれません。
実は、税理士と税理士法人では源泉徴収の取扱いが変わってきます。
普段仕事を依頼している税理士は、個人の税理士ですか?それとも税理士法人に所属している税理士ですか?
あまり意識していないかもしれませんが、源泉所得税の実務を行う上で非常に重要なポイントになります。
これから、税理士と税理士法人に支払う場合の違いについて確認していきます。
税理士法人に支払う場合
税理士法人に支払う税理士報酬については、源泉徴収の必要はありません。
源泉徴収せずに請求額をそのまま支払えば大丈夫です。
支払先が税理士だと源泉徴収が必要と考えてしまいがちですが、相手が法人であれば源泉徴収の必要はありません。
税理士法人は源泉徴収不要とおさえておくと間違うことがなくなります。
個人の税理士に支払う場合
個人の税理士に支払う場合は、源泉徴収が必要になります。
請求書には源泉徴収の金額が記載されているため、報酬の総額から源泉徴収分を差し引いて支払うことになります。
税理士からの請求書であれば源泉徴収額が間違っていることはないと思いますが、他士業の請求書では源泉徴収の記載がない請求書を誤って発行していることもあります。
士業へ報酬を支払う場合は、支払額が正しいかいつも以上に確認するようにしましょう。
源泉徴収の対象に含まれるもの
税理士業務に関するものは、源泉徴収の対象になります。
謝金、調査費、日当、旅費などの名目で支払われるものであっても対象に含まれます。
ただし、通常必要な範囲内の交通費や宿泊費として、報酬の支払者が交通機関やホテル等に直接支払うものについては、源泉徴収の対象に含めなくてもよいことになっています。
消費税の取扱い
税理士に支払う報酬に消費税が含まれている場合、原則は消費税を含めた金額が源泉徴収の対象になります。しかし、請求書等において、報酬と消費税が明確に区分されている場合は、税抜金額を源泉徴収の対象とすることができます。
実務上は、税抜金額をもとに源泉徴収税額を計算していることが多いです。
源泉徴収額の計算方法
源泉徴収する金額は、1回に支払う金額が100万円以下である場合と100万円を超える場合で計算方法が変わります。
100万円までは税率が10.21%、100万円を超える分は税率が20.42%になります。
(例)支払額が10万円
10万円 × 10.21% = 10,210円
(例)支払額が150万円
(150万円 – 100万円)×20.42%+100万円 × 10.21% = 204,200円
源泉所得税の納付
源泉徴収した所得税は、原則として翌月の10日までに納付することになります。
小規模事業者で源泉所得税の納期の特例を受けている場合は、半年分を2回に分けて納付することになります。
- 1月から6月までの源泉所得税⇒7月10日までに納付
- 7月から12月までの源泉所得税⇒翌年1月20日までに納付
行政書士に支払う場合
実務では、行政書士に報酬を支払う場合もよく出てきます。
行政書士に報酬を支払う場合は、税理士等他の士業へ支払う場合と取扱いが異なるため注意が必要です。
行政書士に対する報酬は、基本的には源泉徴収の必要はありません。
行政書士業務に対する報酬は、源泉徴収の対象となる報酬には該当しないためです。
国税庁HPにも載っているため、参考にしてみてください。
ただし、「建築に関する申請若しくは届出」の書類の作成のような場合は、行政書士に対する支払であっても、源泉徴収の対象になります。
このあたりは規定がかなり細かいので、判断に迷う場合は税理士に確認するようにしましょう。
なお、行政書士法人に報酬を支払う場合は、「建築に関する申請若しくは届出」の書類の作成であっても源泉徴収の必要はありません。
まとめ
源泉徴収が必要になるかは、相手方が個人なのか法人なのかで判断します。
法人の場合は、源泉徴収が不要になるのがポイントです。
個人の税理士⇒源泉徴収が必要
税理士法人⇒源泉徴収不要