事業用の決済で、クレジットカードを使用する機会は、年々増えてきています。
クレジットカードは、上手く使うと会計処理を効率化できるため、とても便利なアイテムです。
クレジットカードで経費を支払うメリットはたくさんあります。
しかし、誤った使い方をすると、逆に会計処理が大変になってしまうこともあります。
クレジットカードを使用するときは、どのような点に注意したら良いのでしょうか?
目次
クレジットカードで経費を支払うメリット
会計ソフトと連動できる
クレジットカードで経費を支払うメリットに、会計ソフトと連動できることがあげられます。
クレジットカードのデータを会計ソフトに取り込むと、いちいち仕訳を入力する必要がなくなります。
あらかじめ会計ソフトで設定を行っておけば、「取引日・支払金額・取引先」が自動的に取り込まれます。
賢い会計ソフトであれば、情報を取り込むだけで仕訳が完成するので、何も手を加える必要がありません。
今まで手入力していた人にとっては画期的なことでしょう。
大量の経費を現金払いしていた場合は、クレジットカード払いに変更するだけで、経理処理の大幅な時間短縮が可能になります。
会計ソフトと電子マネーの融合化は、今後ますます加速していきます。
将来的には、さらに使い勝手が良くなることでしょう。
カードの支払明細が残る
経理処理の大原則として、経費に落とすためにはレシートや領収書などの内容がわかる書類を残しておくことが必要になります。
何に使ったのか証明できないと経費にできないルールになっています。
現金で支払った場合は、レシートや領収書をなくしてしまうと、証拠がないため経費にできなくなってしまいます。
クレジットカードで支払いをすれば、カード会社からクレジットカード明細をもらうことができます。電子データで確認することもできます。
「いつ、どこで、いくら使ったのか」を自動的に管理してくれています。
クレジットカードで支払ってもレシート等を保管しておくことは必要ですが、最悪なくしてしまっても何に使ったのか証明することができます。
現金の管理が不要になる
クレジットカード決済を活用することで、キャッシュレス化を進めることができます。
クリーンな会計処理を行うためには、現金取引はできる限り少なくしたほうが良いです。
現金での取引は、銀行を経由した取引に比べて不正がしやすくなります。
例えば、売上をちょろまかしたりといったことですね。
税務調査では、現金取引は重点的にチェックされます。
会計上の現金残高が、実際に手元にある現金の金額と一致しているとは限りません。
本当に現金残高があっているのか金庫をチェックされたりします。
銀行預金であれば、通帳に記載されている金額は本当に存在しているお金です。
同じお金であっても銀行を経由することで、信用力は飛躍的に高まります。
関連記事>>>税務調査で狙われる勘定科目と注意点まとめ
全ての支払をクレジットカードに一本化することができれば、現金出納帳をなくすこともできます。
現金出納帳は、作成に手間がかかる割には税務調査で狙われやすく、あまりいいところがありません。
この際、現金取引をなくしてみるのはいかがでしょうか。
ポイントが貯まる
クレジットカードを使って支払いをするとポイントが貯まります。
ポイント還元率が1%のクレジットカードであれば、現金で支払うよりも1%コストカットできる計算になります。
利益率が1%変わってくるのは、かなり大きいです。利益率を1%向上させるためには、大変な企業努力が必要になります。
それが、クレジットカードを導入するだけで、いとも簡単にコストカットできることになります。
同じモノを買うのであれば、ポイントが貯まった方が絶対にお得です。
現金で買うよりもクレジットカードで買った方が良いと思いませんか?
ポイントが貯まるのはあくまで副次的なメリットですが、クレジットカードを導入するための動機づけとしては非常に大きいものがあります。
資金繰りが有利になる
クレジットカードで購入した場合、支払いのタイミングは1~2か月後になります。
現金で購入するよりも、お金が出ていくタイミングを後ろに伸ばせるため、資金繰りが有利になります。
クレジットカードを資金繰り目的で活用するのは本来の目的とは違いますが、隠れたメリットと言えます。
他の手段で資金調達して現金払いするくらいなら、クレジットカードを使えばよいのです。
ただし、資金繰りが有利になるのは、あくまで副次的なメリットとして捉えておいた方がいいです。
資金繰りのためにクレジットカードに手を出すようでは、会社の経営が行き詰まるのは時間の問題と言えます。
クレジットカードで経費を支払う場合の注意点
クレジットカード明細は領収書にならない
クレジットカードで支払いをすると、後日カード会社からクレジットカード明細が発行されます。
何に使ったのかカード会社が管理してくれるので、非常に便利です。
しかし、クレジットカード明細は、厳密には領収書の代わりにはなりません。
実務上は、クレジットカード明細だけでもなんとかなることもありますが、本来は別に領収書等をもらう必要があります。
税務調査が入ったときに、クレジットカード明細だけで経費を認めてもらえる保証はありません。
クレジットカード払いであっても、領収書をもらう癖を付けておいた方が良いでしょう。
クレジットカード明細だけでは内容がわからない
金額が10万円未満の支出であれば、消耗品費として処理できるのでそれほど問題にはなりません。しかし、10万円以上の支出になってくると少々厄介なことになります。
10万円を超えてくると、基本的には一括で費用処理はできないので、資産計上が必要になります。(中小企業の場合は、30万円までは費用処理できる少額減価償却資産という取扱いがあります。)
10万円以上の支出があった場合は、資本的支出と修繕費のどちらに該当するのか判断しないといけません。
資本的支出であれば、資産計上が必要になります。
資本的支出と修繕費を判断するには、具体的な内容まで確認しないといけません。
ところが、クレジットカード明細では、日付、取引先名、金額といった情報しかわからないため、判断ができないのです。
金額が大きい支出をした場合は、必ず内容の分かる明細も保管しておくようにしましょう。
内容が分からないと、保守的に全額資産計上するという処理しかできなくなってしまいます。
事業用とプライベート用を区別する
事業用にクレジットカードを使う場合は、事業用の買い物だけに限定し、プライベート用の買い物には使わないのが原則です。
しかし、中には、事業用とプライベート用の支出が混在してしまっているケースがあります。
その場合は、事業用とプライベート用の支出を明確に分けて、経理処理をしなければいけません。
具定例で見てみましょう。
【例】
個人で事業をしているAさんは、文房具3,000円と洋服5,000円をクレジットカード払いで購入した。
ただし、洋服は事業に関係のない支出である。
仕訳は次のようになります。
(消耗品費) 3,000 (普通預金) 8,000
(事業主貸) 5,000
個人事業主の場合、プライベート用の支出は「事業主貸」という勘定科目を使って処理します。
事業主貸は店主勘定とも呼ばれ、個人事業特有の処理になります。
【例】
社長であるB氏は、会社のクレジットカードを使って、文房具3,000円と洋服5,000円を購入した。
ただし、洋服は事業に関係のない支出である。
(消耗品費) 3,000 (普通預金) 8,000
(役員貸付金) 5,000
今回の例では、会社の経理になるので事業主貸は使いません。
会社のお金でプライベートの支出をしたときは、会社からお金を借りたものとして処理します。
B氏は社長なので、「役員貸付金」を使うことになります。
取引量が増えてくると、事業用とプライベート用を分けるだけでかなりの時間を浪費してしまいます。
事業用とプライベート用では、クレジットカードを使い分けるようにしましょう。
事業用とプライベート用をごちゃ混ぜにしていると、税務調査時に管理がずさんだと目をつけられることにもなりかねません。
関連記事→税務調査で狙われる勘定科目と注意点まとめ
二重計上に注意
クレジットカードと現金の支払いが混在していると、経費を二重で計上してしまうリスクがあります。
注意しないといけないのは、クレジットカード払いしたときにもらった領収書等と現金払いしたときにもらった領収書等が、ごちゃ混ぜになってしまっているケースです。
現金で経費を支払ったときは、もらった領収書等を見て、会計ソフトに仕訳を入力していくことになります。
クレジットカード払いの場合は、カード会社が発行するカード明細をもとに仕訳を入力していくことになります。
もしも、クレジットカード払いしたときの領収書等を、現金払いと混同して処理してしまったら、経費を2回計上してしまうことになります。
いわゆる二重計上というやつです。
あとから二重計上が発覚すると、確定申告をやり直さないといけない事態になるかもしれません。
二重計上を防ぐためには、クレジットカード払いしたときにもらった領収書等と現金払いしたときにもらった領収書等は、きちんと分けておくことです。
日頃の管理が大切ということですね。
クレジットカードで経費を支払う場合の会計処理
クレジットカードで経費を支払ったときは、2通りの仕訳方法があります。
- 請求日に費用計上する方法
- 支払日に費用計上する方法
請求日に費用計上する方法
クレジットカード明細の日付で費用処理する方法です。
請求があった時点では未払費用で処理をしておき、後日銀行口座から引き落としがあったタイミングで未払費用を取り崩します。
発生主義に基づく会計処理になるので、より厳密な処理といえます。
下記が仕訳例になります。
【請求時】
(消耗品費) xxx (未払費用) xxx
(通信費) xxx
(水道光熱費) xxx
【支払い時】
(未払費用) xxx (普通預金) xxx
支払日に費用計上する方法
銀行口座から引き落としがあった日付で費用処理する方法です。
この方法だと、期中では未払費用は出てきません。
支払時しか仕訳が出てこないため、簡便的な会計処理といえます。
下記が仕訳例になります。
【支払時】
(消耗品費) xxx (普通預金) xxx
(通信費) xxx
(水道光熱費) xxx
どちらの方法で会計処理をしても、期末時点で未払費用を立てれば、最終的には同じ結果になります。
月次損益を正確に計算するためには、請求日に費用計上する方法が望ましいですが、毎月支払額が一定で大きな変動がないようであれば、支払日に費用計上する方法でも問題ないでしょう。
支払回数は1回払いにする
クレジットカードで支払う場合は、1回払いに統一しておくことをおすすめします。
分割払いを選択すると、利息の支払いが発生したり、未払い処理が必要になったりと経理の手間が増えます。
【例】
12万円のパソコンをクレジットカード(12回払い)で購入した。
【請求時】
(備品) 120,000 (未払金) 120,000
【1回目支払い時】
(未払金) 10,000 (普通預金) 11,000
(支払利息) 1,000
※未払金の残高110,000
分割払いになると、1回で未払金を消し込むことができなくなります。
そのため、支払いが終わるまで未払金の残高を管理する必要がでてきます。
クレジットカードでは、分割払いやリボ払いを選ぶことができますが、経理処理が複雑になってしまうので止めておくのが無難です。
期末での未払計上
クレジットカード払いしたときに注意しないといけないのが、会計期間をまたぐ請求があった場合です。
クレジットカードを使うと、支払いは後払いになります。
例えば、9月にクレジットカードで買い物をすると、実際に料金を支払うのは10月や11月になったりします。
9月決算の会社であれば、実際に支払うのは10月以降であっても、9月に購入しているものは当期の費用として処理しなければいけません。
決算処理を行うときは、翌月以降のクレジットカード明細も確認し、未払費用の計上漏れがないように注意しましょう。
まとめ
クレジットカード決済を導入するときに一番大切なのは、プライベート用と事業用のクレジットカードを明確に分けることです。
両者がごちゃ混ぜになってしまうと、管理面で問題がありますし、経理処理の負担も増えます。
それ程難しい話ではありません。事業用のクレジットカードを用意すればOKです。
明確に分けることさえ気を付ければ、クレジットカード決済は本当に便利です。
ぜひクレジットカードを有効活用してみてください。