月次損益を正確に把握するために経理ですべきこと。発生主義で処理しよう

発生主義で処理しよう

自社の状況をリアルタイムで把握できるようになると、意思決定のスピードを上げることができるようになります。

月次決算をきちんと行い、月次損益を正確に把握することがその一歩です。月次決算をきちんと行っていると、決算時の着地予想の精度が上がるため、決算業務や資金計画についてもスムーズに行うことができます。

今回は、月次損益を正確に把握するために経理ですべきことを確認していきます。

発生主義と現金主義の違い

収益と費用を計上する方法に「発生主義」と「現金主義」の2つの考え方があります。

月次損益を正確に把握するためには「発生主義」により会計処理を行うことが大切です。

2つの考え方の違いを確認してみます。

現金主義

現金主義とは、お金が入ってきたときに収益を計上し、お金が出て行ったときに費用を計上する考え方です。

現金(お金)の入出金に連動して、会計処理を行う方法です。非常にシンプルな方法です。家計簿をつけるイメージに近いです。

複雑な経済取引には対応できないため、現金主義は小規模事業者など一部の人しか認められていません。

発生主義

発生主義とは、お金のやりとりに関係なく取引が発生した時点で、収益と費用を計上する考え方です。

掛け取引のように、お金のやり取りがまだ行われていない場合であっても、取引が確定した段階で収益や費用を計上することができます。

現在では、ほとんどの企業で発生主義が用いられています。発生主義の考え方であれば、複雑な経済取引にも対応することができます。

月次損益を正確に把握するためには「発生主義」

月次損益を正確に把握するためには、発生主義の考え方を理解することが大切です。

例えば、1年分の仕入代金を期末に一括で支払う場合を考えてみます。

現金主義であれば、代金を支払うのが期末なので、最後の月に1年分の仕入代金が費用処理されることになります。最後の月だけ費用が膨れ上がることになります。

逆に考えれば、最後の月以外は仕入代金の支払いがないため費用が出てこないことになります。年間トータルではあまり儲かっていない場合でも、仕入代金の支払いがない月では費用が出てこないため、儲かっていると錯覚してしまう恐れがあります。

発生主義の考え方であれば、商品の売上に対応する仕入がその都度費用処理されていくため、期末に費用がまとめて発生するということはありません。

正確な期間損益計算が可能になります。

減価償却費を毎月概算計上する

減価償却費は決算整理仕訳で1年分の金額を計上することができますが、月次損益を正確に把握するためには、減価償却費を毎月計上していくことが必要です。

減価償却費のおすすめの計上方法は、概算額を毎月見積もりで計上していく方法になります。

固定資産については 固定資産台帳で管理している場合が多いと思います。固定資産台帳で年間の減価償却費を計算し、年間の減価償却費を12等分した金額を毎月概算計上していきます。

決算の際は、決算整理仕訳で毎月概算計上していた減価償却費を一旦逆仕訳でゼロにし、正しい年間の減価償却費を再度計上することになります。

この方法によると減価償却費が平準化されるため、月次損益を正確に把握することができるようになります。

引当金を毎月概算計上する

引当金を毎月概算計上していくことも月次損益を正確に把握する上で大切になります。

賞与引当金の例で考えてみます。

夏と冬に従業員に賞与を支給する場合、半年分をまとめて支払うため賞与を支給する月に人件費の支出が増えることになります。

しかし、賞与は継続的に労働の提供を受けていることによる対価として支払うものであり、支払う月だけ費用が発生する性質のものではありません。

現金の支払いは年2回であっても、毎月費用が発生していると考える方が実態に即しています。こういう場合に使用するのが賞与引当金になります。年間の賞与の支給額を見積り、12等分した金額を毎月概算計上していきます。

こうすることで、賞与の支給月だけ人件費がかさみ、業績が悪くなるということがなくなります。

余談ですが、引当金については、会計と税務で考え方が異なります。賞与引当金については税務上では認められていません。会計上で賞与引当金を計上していても、法人税の申告の際に加算調整されます。

税務上で認められている引当金は、貸倒引当金と返品調整引当金の2つだけになります。

経過勘定を使う

月次損益を正確に把握するためには「発生主義」により会計処理を行うことが大切です。

発生主義のカギを握るのが経過勘定になります。

経過勘定には、前払費用、未払費用、前受収益、未収収益の4種類があります。これらは適正な期間損益計算を行うために使用する勘定科目になります。

金額が僅少である場合は、一括で費用計上や収益計上しても影響はあまりありませんが、金額が大きい場合は、期間按分しないと月次損益に歪みが生じてしまいます。

今回は前払費用と未払費用についてご紹介します。

前払費用

前払費用の例としては、家賃、保険料などがあります。

例えば1年分の家賃を一括で先払いしている場合は、まとめて費用計上すると月次損益に歪みが生じます。

前払費用勘定を使い、毎月の家賃の費用計上額が平準化するように会計処理を行うことが大切です。

未払費用

未払費用は、支払期日はまだ到来していないが、すでに役務の提供を受けている場合に使用する勘定科目になります。

未払費用の例としては、給与、利息、リース料、賃借料、保険料などがあります。

月末が支払期日であるが、月末が休日だったため翌月に支払いがずれ込む場合は、未払費用勘定を使用することで、費用計上額の歪みを解消することができます。

未払費用と似た勘定科目に「未払金」があります。

未払金は、機械や備品などを後払いで購入した時に使用します。未払金は買掛金に近い使い方をします。本業の仕入だと買掛金を使いますが、本業の仕入以外に使う勘定科目が未払金です。

未払費用は継続的な契約があり役務の提供が続いていく場合に使用し、未払金は単発の取引で終わる場合に使用するイメージです。正確な表現ではありませんが、イメージはつかめると思います。

まとめ

月次損益を正確に把握するためには「発生主義」の考え方を理解することが大切です。

発生主義の会計処理を行うことで、適切な期間損益計算が可能になります。

会計の精度が上がることで、会計データを経営に活かすことができます。