会計事務所の仕事で重要なのはバランス感覚

会計事務所の仕事に必要なのはバランス感覚

会計事務所で仕事をしていく上で、バランス感覚は非常に重要です。

バランス感覚とは、何が重要なのかを見極めて、優先順位をつけることです。

会計事務所での仕事は期限が決まっているため、同時並行で仕事を進めていかないといけない場面がたくさん出てきます。

何が大事なのか適切に判断できないと、仕事のパフォーマンスに大きく影響してきます。

大局観という考え方

将棋には「大局観」という言葉があります。

的確な形勢判断を行う能力という意味で使われています。

将棋中継や将棋の解説を聞いているとたまに出てくるのですが、私は「バランス感覚」や「木を見て森を見ず」という意味だと理解しています。

将棋の形勢判断の基準としては、駒の損得、駒の働き、王様の守りの固さ、手番などがあります。

一番わかりやすいのは駒の損得です。相手よりもたくさん駒を持っていたら、たくさんある方が有利ですよね。

しかし、将棋の局面によっては、駒をたくさん取ることよりも手番(攻めのターン)を握る方が重要になってくることがあります。

将棋は、先に相手の王様を詰ませた方が勝ちになるゲームなので、手番を握ることはとても重要です。

将棋の駒では飛車が一番強いのですが、終盤になってくると、飛車を犠牲にしてでも手番を握らないと勝てない場面が出てきます。

この局面では、駒の損得と手番のどちらを優先させるべきなのか。飛車を切り捨てるタイミングが早すぎても遅すぎても、勝つことはできません。

局面によって正解は変わってきます。この判断が正確にできるようになると、将棋で有段者になれます。

 

大局観の視点を持つことは、会計事務所での仕事においても非常に重要なことです。

会計事務所での大局観とはどういったものでしょうか?

会計事務所の仕事の特徴

会計事務所の仕事の特徴としては、期限があることがあげられます。

税理士の仕事には、税務代理や税務書類の作成というものがあります。お客様から依頼を受けて、税理士がお客様の代わりに書類を作ったり、手続きをしたりする仕事です。

税務書類で有名なのは確定申告書です。事業を行っている個人事業主や法人は、基本的に1年に1回決算を行って、どれだけ儲かったのか計算しないといけません。

そして、儲かり具合に応じて所得税や法人税といった税金を払わないといけません。支払う税額を計算した書類が、確定申告書です。

確定申告書は提出期限が決まっています。個人事業主であれば、3月15日まで。法人であれば、決算日から2ヶ月以内です。3月31日が決算日の場合は、5月31日が申告期限となります。

日本の会社は、3月決算が多いです。12月決算も割とあります。外資系企業は、12月決算が圧倒的に多いですね。

そうすると、12月決算であれば、2月末までが申告期限。3月決算であれば5月末が申告期限となります。個人事業主は、一律で3月15日が申告期限になります。

お察しのよい皆様なら既にお気づきかと思いますが、申告期限って固まっていませんか?

決算期 申告期限
12月決算法人  2/28
個人事業主 3/15
3月決算法人 5/31

12月決算から3月決算までの申告シーズンは、会計事務所の繁忙期になります。「税理士の死のロード」と呼ばれているとかいないとか。

これから会計事務所への就職を考えている場合は、深夜に会計事務所を見に行ってみましょう。

明かりが煌々とついて不夜城化している会計事務所は、ブラック企業の可能性が高いです。

 

とある会計事務所に勤めるAさんは、12月決算法人を10社担当しているそうです。そうなると、2月に10社分の申告書を提出しなければいけません。

さらに、翌月には個人の確定申告も控えています。12月決算法人の申告作業と並行して、個人の確定申告の準備もしていかないといけません。

2月の営業日が20日であれば、2日に1社分は申告書を作っていかないと間に合わない計算です。

申告期限は絶対です。少しでも遅れると、期限後申告でペナルティの対象になってしまいます。ちょっとお腹が痛かったから申告期限を伸ばしてくださいという訳にもいきません。

Aさんの時間には限りがあります。繁忙期なのでがんばって1日12時間働くとしても、20日で240時間しかありません。

この240時間を最適に配分して、期限内で10社分の申告書を作成しないといけないのです。

会計事務所の仕事で重要なのはバランス感覚

限りある時間をいかに効率良く使うか。このときに大切になってくる考え方が、大局観です。

重要な項目とどうでもいい項目を見極めて、重要な項目には時間を使い、どうでもいい項目はさっと流す。このバランス感覚が非常に重要になります。

全ての項目を完璧にしようとすると、いくら時間があっても足りません。また、全ての項目を完璧にすることが、必ずしもお客様にとって良いこととは限りません。

お客様との契約がタイムチャージであるときは、特に注意が必要です。タイムチャージとは、実際に作業をした時間に応じて、報酬を支払う形態です。

敏腕税理士になってくると1時間あたりの料金が5万円を超えることもあります。1時間作業をして4万円節税したとしても、お客様にメリットはありません。作業をしないほうが良い場合もあるのです。

確定申告書においても、ここは絶対に間違えてはいけないという項目もあれば、そんなに重要でないという項目もあります。金額が大きい項目や税務調査で狙われる重要な項目にこそ、時間を使わないといけません。

関連記事>>>税務調査で狙われる勘定科目と注意点まとめ

この見極めを的確にできるかどうかが、税理士のスキルを左右するといっても過言ではありません。

税理士は1円たりとも間違えないと思っている方がいらっしゃるかもしれません。

もちろん1円単位で数字を合わせられるのなら、合わすのに越したことはありません。でも、1円合わないどうしようと1時間悩んでいても時間の無駄です。

その1時間は他の項目に使わないといけません。1円合わないのは微々たる影響しかありませんが、1時間失ったことで1万円節税できるチャンスを失ったかもしれないのです。

何が重要なのかを見極めて優先順位をつける。まさに大局観の考え方です。

繁忙期に疲弊しないために

大局観は、仕事をする上で非常に重要な考え方です。バランス感覚を磨き、広い視野を持てるようになると、いろいろなことに応用できるようになります。

会計事務所の繁忙期は結構きついです。毎日期限に追われている感覚になります。

抜くところは抜くというスキルを身に付けないと、体も精神ももちません。

会計事務所で働いている人の中には、税理士試験を目指している方もいらっしゃるでしょう。

税理士試験は8月です。一般的に、会計事務所の繁忙期は12月~5月くらいですが、この時期に勉強が進まないようだと、合格への道筋がかなり厳しくなります。

仕事をするのはもちろん大切なことですが、人生仕事だけではありません。

ちゃんと自分の時間を確保できないと、何のために生きているのかわからなくなってきます。

税理士試験を目指して勉強しているということは、きっと何か目標があって勉強しているはずです。

繁忙期は大変ですが、受験生の方には、なんとか受験勉強と仕事を両立してもらいたいです。

関連記事>>>税理士試験に合格するための心構え

私自身も繁忙期で疲弊してしまわないように、大局観という視点を持って仕事をしていくことを心がけたいと思います。