税理士受験生の永遠のテーマが、税法はどの科目を選ぶべきかというものです。
選択する科目によって勉強時間や合格後の仕事のスタイルに影響があるため、悩ましい問題です。
もう一度私が税理士試験を受験するとしても、何を選択するかはかなり悩むはずです。
国税4法に合格できるのであれば話が早いですが、その人の置かれている状況によっては、国税4法がベストの選択とは限らないのが難しいところです。
どういう視点で税法の科目を選ぶべきか、考えていきたいと思います。
税法科目は全部で9科目
税理士試験は科目合格制の試験です。全部で11科目あり、最終的に5科目合格すれば晴れて税理士になれます。
税理士試験は、必修科目、選択必修科目、選択科目に分かれています。
- 必修科目:簿記論、財務諸表論
- 選択必修科目:法人税法、所得税法
- 選択科目:相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、事業税又は住民税、固定資産税
会計科目は必修で、税法科目は選択制になっています。法人税と所得税法は選択必修科目となっており、どちらか1科目は合格することが必要になります。
税法は全部で9科目あります。科目数が多いので、比較的自由に選ぶことができます。
科目によって、勉強時間や実務での役立ち度が変わってきます。どの科目を選択するかは、かなり重要なポイントです。
次の表は、資格の大原が公表している科目別ごとの学習時間の目安です。
科目名 | 学習時間の目安 |
所得税法 | 600時間 |
法人税法 | 600時間 |
相続税法 | 520時間 |
消費税法 | 300時間 |
酒税法 | 170時間 |
国税徴収法 | 170時間 |
住民税 | 190時間 |
事業税 | 190時間 |
固定資産税 | 190時間 |
科目ごとに結構ばらつきがあることがわかります。
所得税や法人税が本当に600時間で合格できるのかとか、いろいろツッコミどころはありますが、一つの参考にはなります。
それでは、具体的に科目選択について考えていきます。
実務重視なら国税4法
実務重視で選ぶのであれば、国税4法がおすすめです。
法人税法、所得税法、相続税法、消費税法の4つが、国税4法と呼ばれています。
国税4法は、国の税収の大部分を占める主要な税目です。税理士の実務においても核になります。
法人税や所得税の申告業務は、税理士のメイン業務です。そのため、法人税や所得税がわからないと仕事になりません。
なかでも法人税は超重要科目です。法人税がわからないと実務でめちゃくちゃ困ります。
法人税と所得税のどちらが重要かといえば、やはり法人税かなと思います。
法人税の方が納税額が大きくなりやすいですからね。納税額が大きい方が、当然リスクは高くなります。
国税4法は申告納税方式なので、自分で税金を計算して納付しないといけません。
計算のやり方がわからなかったら、もうお手上げです。
逆に固定資産税なんかの地方税は、賦課課税方式なので、計算方法がわからなくてもなんとかなります。
勝手に納付書を送ってきます。(別に固定資産税をディスっているわけではないですよ!)
私は、税理士試験で法人税の勉強をしていなかったため、税理士試験に合格してからわざわざ大原の法人税法講座を受講し、受験生に混ざって勉強していました。
なんだかんだ税理士試験の勉強は実務で役に立ちます。資格学校の教材はわかりやすくできているため、実務書を読んで勉強するよりも、スムーズに頭に入ってきます。
国税4法は税理士になったら、遅かれ早かれ勉強しないといけません。税理士試験で勉強しておけば、税理士になったあと楽になります。
合格後の勉強は、受験生時代よりも危機感に欠けるため、どうしても身に付きにくいです。
受験生時代は目の色を変えて勉強しますからね。どうせ勉強するのなら、税理士試験で勉強しておくのがおすすめです。
戦略的にミニ税法はあり
ミニ税法は、科目のボリュームが少ないため、勉強時間が少なくて済むメリットがあります。
働きながら勉強する場合、勉強時間を短縮できるのは非常に大きなメリットです。
社会人が、法人税のようなボリュームの多い科目で合格水準に達するのは大変です。
法人税の勉強をして、全ての範囲が終わらないまま試験に臨むよりは、ミニ税法で合格水準に達した状態で試験に臨む方が、合格できる確立は高くなります。
税理士試験は試験に合格するのが目標です。実務であまり役に立たない科目であっても、税理士になるためには同じ1科目です。
税理士試験合格のためと割り切るのなら、ミニ税法もありです。
ただし、注意しないといけないのは、勉強時間の少なさと合格のしやすさは、全くの別物ということです。
税理士試験は競争試験のため、上位10%に入らないと科目合格できません。
勉強時間が少ない科目は、合格水準に達するのは比較的簡単です。
ただし、合格水準に達しやすいというのは他の人にも言えることです。
ミニ税法は、試験当日、合格水準に達しているライバルが多くなります。ハイレベルの争いになります。
ケアレスミスが命取りになるため、実力者であっても合格できる保証はありません。どうしても国税4法に比べて、運要素が高くなってしまいます。
興味のある科目を選択
将来どのような税理士になりたいのかイメージして、興味のある科目を選ぶのは、モチベーションを保つ上で効果的です。
法人税や所得税はボリュームが多くて大変ですが、勉強の内容は他の科目に比べて面白いです。
あくまで個人的な意見ですが。身近な税金であるため、イメージしやすいからかもしれません。
相続税も人気のある科目です。実務においても、事業承継は非常にニーズが高い分野です。
将来、相続業務を行いたいと考えている人は、相続税を選択すれば関心を持って勉強に取り組めるはずです。
相続税に強い事務所に就職したいと考えているのであれば、相続税は取っておきたいですね。
相続税は、税法科目の中でも特殊な分野なので、受験生時代に相続税を勉強していないと、実務で相続税を扱っていくのはハードルが高くなります。
所得税や法人税であれば、実務をやりながら少しずつ勉強していくこともできますが、相続税だといきなり実務でやっていくというのはかなり厳しいです。
消費税法を選んだ理由
私は税法免除の制度によって、税法科目が2科目免除になっているので、試験を受けて合格したのは1科目だけです。
関連記事>>>税理士試験で税法免除を選ぶ理由。会社員を辞めて大学院に進学した体験談
私が税法科目で選択したのは、消費税法になります。
実は、税法科目を選ぶ際に、法人税と消費税のどちらにするかかなり迷いました。
税理士試験に合格した後はBIG4税理士法人で働きたかったので、法人税法は是が非でも取っておきたかったのです。
法人税法に合格していると、BIG4税理士法人へ就職する際に、かなり有利になります。
関連記事>>>BIG4税理士法人の特徴【就職・転職】
ですが、複数科目を同時受験するつもりだったことや、勉強に割ける時間を考慮して、最終的に消費税を選択しました。
実務上は法人税の方が重要ですが、早期合格できたので、受験戦略上は消費税を選んで正解だったと考えています。
消費税には関心があったため、割と楽しく勉強できました。
しかし、勉強が面白いと感じているうちは、試験には合格できません。
面白いと感じているところから3周くらい回って、もう二度と見たくないと思うくらいやり込まないといけないのが辛いところです。
消費税法を選択して良かったと思うことを少し書いてみたいと思います。
消費税は実務でよく使う税目です。
試験勉強のおかげで、不課税や非課税なんかの分類は、抵抗感なくやっていくことができました。
消費税は、結構怖い税金でもあります。
税理士が訴えられる事案で一番多いのが、消費税がらみです。
関連記事>>>税理士は消費税届出書のミスで訴えられる!賠償事故は消費税が最多
消費税の届出書については、税理士試験で一通り勉強しておいて良かったなと思っています。
訴えられたくないですからね。
科目選択はその人次第
将来どういう税理士になりたいのかまだよくわからないというのであれば、国税4法を選んでおくのが無難です。
特に法人税であれば、どこの会計事務所であっても評価してくれます。法人税が一番つぶしが効きます。
次点は消費税でしょうか。消費税は、法人でも個人でも関係してくるので、実務で使う頻度は非常に高いです。
所得税は国税収入額がトップの税目であり、非常に重要な科目です。しかし、年1回確定申告のときにしか使わないというのが、少し評価を下げてしまいます。
法人税の知識があれば、所得税にもだいたい対応できるということもあります。
どの科目がベストなのかは、人それぞれなので答えはありません。
合格した科目が、税理士になった後の得意科目になることは多いので、せっかくなら実務で役に立つ科目を選ぶ方が良いかなとは思います。
でも、税理士試験の目的は、実務ができるようになることではなく、税理士資格を得るためです。
自分が一番早く試験合格できる手段を選ぶのがベストだと思います。
私が消費税法を受験したときは、なんと消費税率が5%の時代でした。
当時の知識のまま何もアップデートしなかったら、当然実務では大変なことになります。
税理士試験に合格しても、税理士として働いていく限り、勉強は続けていかないといけません。
なので私には、何が何でも国税4法に合格しないといけないとかいう考えはないです。
科目選択はその人次第です。後悔のない科目選びをしていただければと思います。