福利厚生費を使って節税を考えよう!

福利厚生費を使って節税を考えよう

会社の節税対策として非常に効果的なのが福利厚生費になります。

福利厚生費は、会社の経費になるのはもちろんのこと、福利厚生費の恩恵を受ける従業員や役員にとっても給与課税されない(所得税が非課税)ため、メリットが大きいです。

どのようなものが福利厚生費として処理できるのか確認していきます。

福利厚生費とは

福利厚生費とは、従業員や役員の健康増進・生活向上・慰安などのために支払われる費用のことをいいます。

従業員の労働環境改善や労働意欲向上を図るため、広く利用されています。

福利厚生費の条件

福利厚生費として経費にするための主な条件は、次の3つです。

  • 社会通念上、福利厚生として妥当なものであること
  • 経済的利益が著しく高くないこと
  • 一部の従業員のみではなく、従業員全体が享受できるものであること

福利厚生費は、どこまではOKという明確な基準はありません。

全ての従業員が利用できて、常識の範囲内の費用で支給・サービス提供するものが、福利厚生費として認められます。

福利厚生費の具体例

具体的にどのような項目が福利厚生費として計上できるのか見ていきます。

社宅

福利厚生費の中で、最も効果が大きいのは社宅になります。

一定の条件を満たした場合、従業員や役員の社宅費用を会社の経費にすることができます。

個人で家を借りても家賃は経費になりませんが、会社名義で社宅を契約することで会社の経費にすることができます。

場合によっては、家賃の90%を経費にできることもあります。

具体的にどれくらい税負担が下がるのか見てみましょう。

【例】

社長は現在、個人で月10万円の賃貸契約を結んでいるが、この度法人契約に変更することにした。

会社の状況は、売上高100万円/月、経費60万円/月である。税率は40%とする。

保守的に社長の負担する家賃割合を50%として考えてみます。

社長の家賃負担は下記のようになります。

契約形態 社長負担 説明
個人契約 10万円 社長が10万円不動産会社へ支払う
法人契約 5万円 社長は会社に5万円支払い、会社が不動産会社に10万円支払う

 

法人契約になると、会社が不動産会社に家賃を全額支払い、社長から社長負担分の家賃を受け取ることになります。

次に会社の状況をみてみます。

番号 項目 個人契約 法人契約 説明
売上 100万 105万 法人契約は社長分の賃料5万円増(100+5=105)
経費 60万 70万 法人契約は家賃支払分10万円増(60+10=70)
利益(税引前) 40万 35万 ③=①-②
税金 16万 14万 ④=③×40%
利益(税引後) 24万 21万 ⑤=③-④

 

法人契約の場合、④税金が14万円となり、個人契約の場合に比べて2万円少なくなっています。

法人契約(社宅)に変更したことで、社長個人の賃料負担が5万円下がり、会社の税負担が2万円下がっています。

個人で家賃を支払うときは、給与から所得税を引かれた後の手取り額から払っていくことになります。

個人だと家賃を払っても経費にはならないため、税金は変わりません。

一方、法人で家賃を支払うときは、家賃を経費にすることができます。

経費が増えれば利益は減ります。利益が減れば税金も少なくなります。

法人契約にすると、本来経費にできなかったはずの家賃が、経費にできるようになります。

 

このように、社宅は非常に節税効果の高い方法になります。

ただし、賃料の負担割合を決める際には、細かい規定があるため注意が必要です。

負担割合の計算を間違えると、経費と認められない可能性があります。

社宅を導入する場合は、お近くの税理士に相談するようにしましょう。

なお、社宅と似たものに住宅手当(家賃補助)がありますが、こちらは福利厚生費にはなりません。
住宅手当は、給与扱いになるため所得税がかかってきます。

食事代

従業員や役員に支給する食事で、次の2つの要件をどちらも満たす場合、福利厚生費として処理でき、給与課税はされません。

  • 従業員や役員が、食事代の半分以上を負担していること
  • 会社負担額が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること

また、深夜勤務者に食事代を支給する場合も、給与課税されずに非課税になる取扱いがあります。

深夜勤務者に対し、夜食の支給ができないため、代わりに現金で食事代を補助する場合、1食あたり300円以下であれば、所得税は課税されません。

旅行費用

一定の要件を満たせば、旅行費用を福利厚生費として処理することができます。

会社が、旅行費用を負担した場合、下記の条件を全て満たせば給与課税されないことになっています。

  • 旅行の期間が4泊5日以内
  • 旅行参加者が全従業員数の50%以上
  • 会社負担額が社会通念上一般的な範囲内

条件さえ満たせば、海外旅行であっても所得税は課税されません。

レクリエーション費用

ボウリングやスポーツ大会、社内同好会などの費用を会社が負担した場合、福利厚生費として処理できます。

ただし、役員などの特定の人しか参加できない場合や、負担する費用の額が多額の場合は、給与課税されます。

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忘年会、新年会等

忘年会や新年会、従業員の歓送迎会などを行っている会社は多いです。

これらの費用は、従業員全員が参加するものであれば基本的に福利厚生費になります。

通常に行われている社内行事になるためです。

 

従業員全員の出席が必要なわけではなく、一定以上の人が参加していれば、ある程度欠席者がいても問題ありません。

ただし、特定の人だけで実施する場合は、給与課税や交際費になるので注意が必要です。

 

大きい会社なら部署ごとに開催することもできます。

宴会費用は1次会のみを計上するのが無難です。

参加が自由な2次会は、給与課税や交際費の対象になってしまいます。

忘年会や新年会等を福利厚生費に計上する際のポイントは次の3点です。

  • 従業員全員が参加可能な行事であること
  • 1次会のみで、金額は常識の範囲内であること
  • 一定以上の人が参加していること

慶弔見舞金(結婚祝金、出産祝金、病気見舞金、香典など)

従業員や役員に、慶弔見舞金を支給した場合は、社会通念上、相当と認められる金額であれば、福利厚生費として計上できます。

慶弔見舞金には次のようなものが該当します。

  • 結婚祝金
  • 出産祝金
  • 病気見舞金
  • 災害見舞金
  • 弔慰金
  • 香典
  • お祝いの品
  • 花輪代

なお、取引先など社外の人に慶弔見舞金を支払う場合は、接待交際費になります。

スポーツジムの会費

全従業員の福利厚生としてスポーツジムなどの会費を支出している場合、福利厚生費として処理することができます。

法人契約し、役員が私的に利用しておらず、従業員全員が利用できるのであれば、給与課税されないことになります。

健康診断・人間ドック費用

健康診断や人間ドック費用についても、福利厚生費として計上することができます。

役員など特定の人だけが対象の場合は経費になりませんが、一定年齢以上の希望者は全て検診を受けることができ、かつ、検診を受けた人の全ての費用を負担する場合は、給与課税しなくても良いことになっています。

給与で支給するよりも福利厚生費で支出する方が有利

従業員や役員に給与という形で支給すると、所得税や住民税の課税対象になります。

一方、福利厚生費として計上できると、給与課税されないため所得税や住民税の負担はありません。

給与で支給し、税引き後の手取り額から支出するよりも、福利厚生費として会社の経費で支出する方が、同じサービスを受けるとしても有利になります。

会社にとっても人件費をおさえることができれば、社会保険料の負担が減るため有利になります。

福利厚生費として処理できると、かなりの節税になります。

ただし、福利厚生費は明確な基準があるわけではないので、どこまでが福利厚生費の範囲なのかというのは、判断が難しい部分があります。

税務調査の際に確認されやすい項目でもあるので、注意が必要です。