延滞税や延滞金は、基本的には損金にできません。
納付期限に間に合わなかったときに発生するものであり、ペナルティの意味合いが強いからです。
ところが、延滞税や延滞金の中には損金にしてもいいものがあります。
租税公課の中でどういったものが損金にできるのでしょうか?
目次
延滞税と延滞金の違い
まず始めに用語の確認をしたいと思います。
「延滞税」と「延滞金」は似たような言葉ですが、厳密には違うものになります。
国税にかかるものが延滞税、地方税にかかるものが延滞金です。
延滞税と延滞金は、どちらも納付期限に間に合わなかったときに払わないといけないものです。いわゆる罰金です。
意味はほとんど同じですが、国税と地方税で呼び方が違うとおさえておけばよいでしょう。
延滞税と延滞金の経理処理
延滞税と延滞金でよく出てくるものを紹介します。
延滞税(損金×)
延滞税は、法人税や消費税のような国税を納付期限までに払わなかった場合にかかるものです。
期限までに払わなかったのは納税者の責任なので、延滞税は損金不算入になります。
利子税(損金〇)
法人税の申告期限は決算日から2か月以内になります。3月決算の会社であれば5月31日が申告期限です。
しかし、どうしても期限までに申告が間に合わないというときは、申請すると申告期限を延長することができます。
ところが、延長できるのは申告期限だけであり、納付期限は延長されません。
申告期限を延長していても、納付は今まで通り決算日から2か月以内にしないといけません。
この延長している期間に支払った場合は、利息相当分が利子税としてかかってきます。
2か月を過ぎて払った場合、申告期限の延長をしていなければ延滞税がかかりますが、申告期限の延長をしていれば利子税になります。
利子税は、利息の意味合いになるので支払利息と同様に損金にすることができます。
なお、申告期限の延長ができるのは法人税だけです。消費税は申告期限の延長ができないのでご注意ください。
延滞金(損金×)
延滞金は、道府県民税や市町村民税のような地方税を納付期限までに払わなかった場合にかかるものです。
期限までに払わなかったのは納税者の責任なので、延滞金は損金不算入になります。
延滞金(納期限延長に係るもの)(損金〇)
地方税でも、法人事業税・道府県民税・市町村民税は申告期限の延長ができます。国税の法人税の場合と同じです。
申告期限の延長をしても、もともとの納付期限を過ぎると延滞金がかかります。
しかし、国税の利子税の場合と同様に、利息の意味合いになるので損金にすることができます。
社会保険料の延滞金(損金〇)
社会保険料についても、督促状の指定する期日以降に納付がされたときは延滞金がかかります。
社会保険料に係る延滞金もペナルティの性質を持つものです。
ところが、社会保険料に係る延滞金は損金に算入することができます。
ちょっと意外な感じがするかもしれません。
実は、社会保険料の延滞金は、法人税法の規定で損金算入できない租税公課に含まれていません。社会保険料は税法の規定によるものではないからです。
そのため「社会保険料の延滞金」は、損金算入できることになります。
見込納付すれば利子税を回避できる
利子税や延滞金(納期限延長に係るもの)は、「見込納付」という方法を使うことで回避することができます。
見込納付とは、税額を概算であらかじめ計算しておいて納付する方法です。実際に申告書を提出するタイミングで概算額と実際の納付額を精算します。
見込納付は、当初の納付期限(決算日から2か月以内)までに行うため、期限内に納付していることになります。
そのため、利子税や延滞金(納期限延長に係るもの)はかかってきません。
申告期限の延長をしている場合は、見込納付をすることで余分な納税をおさえることができます。
租税公課の仕訳は摘要欄にメモしよう
延滞税や延滞金を支払ったときは、会計上は租税公課などの科目を使って仕訳を行います。
租税公課なので費用計上されることになります。
しかし、延滞税や延滞金はいわゆる罰金なので、法人税法上は損金にできません。
法人税申告書上で加算調整されることになります。
仕訳を切る際に摘要欄に何も書かないでいると、あとから見返したときに困ります。
同じ租税公課であっても、損金算入できるものと、損金不算入になるものが混ざっているからです。
両者はきちんと分けて処理しないと、法人税申告書を作成するときに間違ってしまいます。
摘要欄で判別できないと、決算時に再度納付書を確認することになり二度手間になります。
仕訳を切るときは、摘要欄に詳細を書いておくようにしましょう。
関連記事>>>会計ソフトの摘要欄の書き方。検索できるように書くのがコツ
延滞税や延滞金の消費税区分は?
延滞税や延滞金は、全て不課税取引(課税対象外)となります。
税金の支払いには対価性がないため、他の税目も含めて消費税の課税対象にはなりません。
なお、租税公課で処理をする項目は、不課税取引か非課税取引のいずれかであるため、消費税はかかりません。
まとめ
損金算入⇒利子税、延滞金(納期限延長に係るもの)、社会保険料の延滞金
損金不算入⇒延滞税、延滞金