税理士試験で税法免除を考えている方へ。
私は大学院の税法免除という方法で、税理士試験で2科目免除を受け税理士になっています。
現在は開業税理士として働いていますが、大学院に進学して本当に良かったと思っています。
税法免除にはたくさんのメリットがあります。
税理士試験で税法免除を選ぶべき理由とは何なのでしょうか。
税理士試験の税法免除
大学院の税法免除とは
税理士になるためには、税理士試験で5科目合格することが必要です。
でも実は、5科目合格する以外にも、税理士になる方法はいくつかあります。
今回ご紹介するのは、大学院で修士論文を書く方法です。修士論文を書くと試験科目が一部免除になるという制度があります。
税法に関する論文であれば税法科目が2科目、会計に関する論文であれば会計科目が1科目免除されます。
詳細は、国税庁HPの「試験科目の免除について」をご参照ください。
一言でいえば、論文を書いて論文の審査に合格すれば、税理士試験で一部科目免除が受けられるというものです。
税法の論文を書いて税法科目で2科目免除受けることを、税法免除と呼んでいます。
税法免除のメリット
税法免除のメリットは、将来設計がしやすくなることです。
税理士試験では、どれだけ勉強しても100%合格する保証はありません。税理士試験は競争試験なので、各科目トップ10%に入らないと合格することはできません。
しかし、税法免除であれば、論文さえきちんと書けば、よほどのことがない限り免除認定されます。
論文は努力すればなんとか書くことはできるので、自分の運命をコントロールすることができます。
まれに論文が書けずに途中で挫折する人もいるので、油断は禁物ですが。
税理士試験は1年に1回です。1年間必死に勉強しても結果が出ないこともあります。
1年という期間は重いです。真剣に勉強して結果が出なかった時のダメージは、計り知れないものがあります。
税理士試験は長丁場の試験です。税理士試験に最終合格した人の平均勉強期間は7~8年というデータもあります。
税理士試験は、勉強を続けていたらいつかは合格できる試験です。
しかし、7~8年もの間、勉強を優先して生活できる人はそれほど多くないでしょう。
そんな長い間、勉強のモチベーションを維持するだけでも大変です。
大学院に進学して論文を書く方が、努力が実りやすいです。試験は水ものですからね。
関連記事>>>税理士試験に合格するための心構え
大学院進学には他にもメリットがあります。同じ志を持つ仲間と出会えることです。
大学院まできて勉強している人は、意識が高い人が多いです。
人間は環境に左右される生き物です。周りに優秀な人が多ければ、自分も良い影響を受けるものです。
税理士試験という同じ目標に向かってがんばる仲間がいるのは、心強いです。
大学院時代の友人は、将来同じ業界で働くことになる可能性も高いです。貴重な人脈になることでしょう。
税法免除のデメリット
税法免除のデメリットは資金面です。大学院に進学するとなると、お金がかかります。
これ以外にデメリットは思いつかないのですが、なかなか悩ましい問題です。
私立の大学院は授業料が高いです。私が入学した早稲田大学大学院だと2年間で約360万円かかりました。
大学院入学前に貯めていた貯金は、大学院の授業料と生活費で全て消し飛んでしまいました。
自分で決めたこととはいえ、辛いものがありますね。
大学院の免除制度を使って税理士になると、不利な扱いを受けるのではないかと心配する人がいるかもしれません。
私は税理士になって何年も経ちますが、今のところ不利な扱いを受けたと感じたことはありません。
お客様からどういうルートで税理士になったか聞かれたこともありません。
もし不利な扱いを受けるとしたら会計事務所への就職の際でしょうか。所長が大学院の試験免除を毛嫌いしていたら可能性はあるかもしれません。
会計事務所なんて星の数ほどありますし、そのときは他をあたりましょう。
個人的には、どういうルートで税理士になろうがあまり関係ないと思っています。
税理士試験と実務は別物です。税理士試験は所詮ふるいにかけるための試験ですからね。
関連記事>>>税理士になって感じた税理士試験と実務とのギャップについて
税理士試験の勉強は実務で役に立ちますが、過度な期待な禁物です。
税法なんてしょっちゅう変わりますし、税理士として働いていく以上、一生勉強していかないといけません。
なので、どういうルートで税理士になろうが、あまり関係ないのです。
税法免除を選んだ理由
私が税法免除を選んだ理由は、少しでも早く税理士になりたかったからです。
お金で時間を買う感覚でした。一刻も早く税理士になりたかったのです。
税理士になって実務を経験した方が、成長スピードは早いと考えていました。
税理士になってしまえば、どういうルートで税理士になろうが関係ないと考えていたので、5科目合格することにこだわりはありませんでした。
私は3回の受験で税理士試験に合格できましたが、試験免除を使っていなかったら、3回の受験では合格できていなかった可能性が高いです。
受験期間が長くなればモチベーションが下がって、途中で税理士試験を諦めていた可能性もあります。
私には、7~8年も試験勉強を続ける自信はありません。
大学院の免除制度の中でも、税法の2科目免除はめちゃくちゃおいしい制度です。
税理士試験の税法科目は難しいので、試験を受けて合格するのは大変です。税法科目を確実にクリアできるのは相当大きいです。
逆に、会計科目1科目の試験免除にはうまみを感じません。会計科目であれば大学院に進学して論文を書くよりも、税理士試験を受けて合格する方が簡単です。
税理士試験の勉強は、税理士としての基礎を作るうえでは非常に有益です。
しかし、税理士試験は、実務ができるようになるための試験とは違います。
私は、税理士試験は税理士資格を得るためのものと割り切り、少しでも早く終わらすことを優先しました。
税理士試験に合格して税理士として働いている今でも、この考え方は間違っていないと思っています。
会社員を辞めて大学院に進学した体験談
私は、27歳のときに会社員を辞めて大学院に進学しました。
そしてその後、30歳で税理士試験に合格しました。
実際、大学院での生活はどんな感じだったのか、体験談を書いていきたいと思います。
大学院入試
私が入学したのは、早稲田大学大学院会計研究科というところです。
会計専門職大学院やアカウンティングスクールと呼ばれています。
税理士試験の税法免除のために大学院に進学する場合、通常は法学研究科を選択することになるので、私の場合は少し特殊だったと思います。
私の場合、税法免除のために大学院に進学したという訳ではなかったので、進学時点では税法の論文を作成できるかは未定でした。
もともとは公認会計士を目指そうと思って大学院に進学したのですが、運よく税法のゼミに入れたので、途中で税理士試験にシフトしました。
税理士を目指した経緯については「なぜ銀行員を辞めて税理士を目指したのか」をご参照ください。
大学院入試は、会計科目(財務会計・管理会計)と面接でした。
筆記試験は会計科目だけだったので、大学院入試用の対策は特にしませんでした。
当時は公認会計士試験の勉強をしていたのですが、公認会計士試験の勉強がそのまま大学院入試対策になりました。
管理会計の試験があるため、税理士試験受験生だと管理会計の対策は別でしておかないといけません。
早稲田大学大学院会計研究科では、入学後にゼミの選考があるため、入試時点では研究計画書の提出は必要ありませんでした。
税理士試験で科目免除を使う場合、注意しないといけないことがあります。
税理士試験で修士論文の科目免除を申請する際に、指導教授のサイン付きの証明書を添付する必要があることです。
指導教授のお墨付きがないと申請ができない仕組みになっています。
証明書にサインしてもらえるかは、指導教授の考えによるところが大きいです。税理士試験の科目免除に理解のある教授でないと、サインしてもらえない可能性があります。
指導教授の裁量で左右されるのはどうかと思いますが、現実はどうやらそういうもののようです。
税法免除を目的に大学院に進学する場合は、事前に指導教授に税理士試験の科目免除に申請が可能か確認しておいた方が良いです。
あとから科目免除に申請できないとなったらシャレになりませんからね。
進学先を決める際は、大学名で選ぶというよりは指導教授で選ぶ方が良いかもしれません。
大学院生の日常
私が入学した早稲田大学大学院会計研究科は、昼間に授業がある2年制のコースです。
卒業単位は60単位なので、だいたい1週間に8コマくらいのイメージです。
理系と違って実験や研究をするわけではないので、大学院の授業だけで1日が終わるということはありません。
公認会計士や税理士を目指している人が多かったので、授業がないときは自習したり、資格学校に行ったりしているケースが多かったです。
専門職大学院では修士論文は書かなくても卒業できるので、論文を書かないのであれば、大学院の負担は軽いです。受験専念とたいして変わりません。
税理士試験を目指すのであれば、ダブルスクールはほぼ必須です。
大学院の授業は、資格試験向けの内容にはなっていません。科目が同じであっても、取り扱っている内容はアカデミック寄りです。
大学院の授業は、理論問題対策にはとても役に立ちますが、計算問題対策にはなりません。
試験テクニックについては、資格学校で身に付けないといけません。(大学院の授業が無駄なわけではありませんよ。資格試験向けの内容でないというだけであって、会計の専門職になるために必要な内容ばかりです。)
修士論文作成
修士論文の作成はどんな感じだったのか振り返ってみます。
早稲田大学大学院会計研究科では、1年目の夏休みにゼミの選考があり、秋に所属ゼミが決まりました。
1年半かけて修士論文を作成するスケジュールになります。
ゼミの選考は指導教授との面接でした。面接ではフルボッコになりましたが、なぜかゼミに入れていただけました。日頃の行いが良かったからでしょう。
1年目は興味のあるテーマを洗い出し、2年目の春頃に論文のテーマを決め執筆にとりかかるというのが、大まかなゼミのスケジュールになります。
1年目はゼミ生が興味のあるテーマについて発表し、先生にシバかれるという微笑ましい感じでした。
今振り返ってみると、日本を代表する偉大な先生にご指導いただける貴重な機会なのだから、もっと勉強してから授業に臨めよと思いますね…。
2年目の夏までは、税理士試験の勉強を優先させていたため、本格的に論文に取り組みだしたのは、税理士試験が終わってからでした。
年明けの1月には論文を完成させる必要があったため、9月から1月までの5ヶ月間くらいで作成しています。
実質的には、11月から1月の間で集中的に作成しました。税理士試験で燃え尽きたため、論文のやる気がなかなか出なかったのです。
現実逃避のため2回ほど海外に逃亡しました。そのせいでかなり追い込まれ、正月も泣きながら論文を書きました。よく挫折しなかったなと思います。
論文で一番難しかったのは、テーマ選びです。当時は、税務の実務経験がなかったため、税法の論点と言われてもピンときませんでした。
テーマ選びは論文のできを左右するくらい重要なものです。テーマは本当に慎重に選びましょう。
論文が完成したあとも、論文発表があったり、教授と質疑応答があったりとなかなか大変でした。(公開処刑でした。)
なんだかんだ論文完成までに、ミニ税法1科目に合格する分くらいの労力はかかったと思います。
論文を書くのは結構大変です。毎年途中で挫折してしまう人が出てきます。
税法免除を舐めてかかると、痛い目に合うかもしれません。
論文指導をしていただけたことはとても幸せなことでした。税法など何もわかっていない素人が、日本を代表する先生にご指導いただける機会はなかなかありません。
論文指導をしていただいた先生には、卒業したあとも大変お世話になっています。
感謝してもしきれません。
税理士になって思うこと
私は、大学院に進学して良かったと思っています。
税法免除が使えたのはかなり大きかったです。
税法免除を使えたからこそ、今税理士として働くことができていると思っています。
勉強の他にも、大学院生活は純粋に楽しかったです。
たくさんの仲間に出会えたのは私の財産です。