税理士であっても要件を満たせば失業給付(失業手当)を受給することができます。
以前は士業と言われる職業(税理士、弁護士、公認会計士など)は、失業給付の対象外となっていました。
しかし、平成25年に取扱いが変更になり、現在は士業であっても受給できるようになっています。
厚生労働省リーフレット「公認会計士、税理士などの資格を持つ方の失業給付の取扱いが変更になります。」
失業給付とは
失業給付とは、失業したときにもらえる給付金です。雇用保険の失業等給付制度のことをいい、求職者給付や就職促進給付などがあります。
会社を辞めたり、解雇されたりして失業すると、収入がなくなります。収入が途絶えると生活ができなくなってしまう人がでるかもしれません。
そういう人を保護するためのセーフティーネットが必要になります。失業給付は、労働者の生活の安定や再就職の促進を図るために支給されるのです。
失業理由や年齢などの条件によって失業給付の金額や期間は変わってきますが、開業しようと考えている税理士の方の給与水準なら、わりといい金額がもらえます。
失業給付の金額をシミュレーションできるサイト「知らないと損をする失業保険」があるので、試しに計算してみるのも面白いです。
失業給付は非課税なので、給与の手取り金額に相当します。結構馬鹿にできない金額です。
独立も再就職になる
雇用保険は、一日でも早く新しい仕事に就くことができるように最低限の生活を保障することを目的としています。
早期に仕事を見つけ再就職した場合には「再就職手当」が支給されます。再就職手当は、基本手当の60%もしくは70%の金額が支給されます。
再就職手当は上限が決まっており、約38万円です。税理士の方であれば上限に近い金額になるのではないかと思います。
雇用保険の再就職には、自分で事業を開始することも含まれます。税理士が独立開業することも再就職になるのです。
つまり、要件を満たせば独立開業をする税理士にも再就職手当が支給されます。
要件に注意
再就職手当を受給するには要件があります。要件は8項目あり、1つでも該当しないものがあると再就職手当は支給されないので注意が必要です。
下記に要件を列挙しますが、とりあえず流していただいて大丈夫です。
- 就職日の前日までの失業認定を受けたうえで、支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上であること。
- 1年を超えて引き続き雇用されると認められること。
- 採用の内定が「受給資格決定日」以後であること。
- 「待機」が経過したあと、職業に就いたこと。
- 離職理由により「給付制限」を受けた場合、「待機」満了後の1か月は、ハローワーク等または、許可・届出のある職業紹介事業者の紹介により職業に就いたこと。
- 離職前の事業主または関連事業主に雇用されたものでないこと。
- 過去3年以内の就職について「再就職手当」「常用就職支度手当」の支給を受けていないこと。
- 雇用保険の被保険者資格を取得していること。
一番注意しないといけないのは「5」の要件です。他の要件はそんなにハードルが高くないので今回の記事では飛ばします。
離職理由が「一身上の都合」の場合、失業給付の給付制限を受けます。
この場合「待機期間 + 1か月間」は、ハローワークなどによって紹介された会社に再就職した場合しか、再就職手当の要件に該当しません。
待機期間は7日です。独立開業する場合は「待機期間 + 1か月間」を経過したあとに開業の手続きを行わないといけないのです。
「待機期間 + 1か月間」で準備
退職後、時間を空けずにすぐに独立する場合は再就職手当はもらえません。再就職手当をもらうのかどうかは、判断が別れるところだと思います。
在職中に独立の準備が順調に行っており、独立直後でも仕事があるという場合はわざわざ「待機期間 + 1か月間」を待たなくても良いかもしれません。
一方、退職後から本格的に独立の準備を始める場合であれば「待機期間 + 1か月間」を利用して開業準備を進めていくのが合理的だと思います。
1ヶ月強あれば、気持ちを切り替えて準備を行う時間は十分あります。手当ももらうことができます。
「待機期間 + 1か月間」の間に粛々と水面下で開業準備を行います。HPやブログ、名刺作成などやることはいくらでもあります。
関連記事>>>税理士として独立後の最初の仕事
失業給付の受給要件をクリアしたらスタートダッシュできるように、開業準備を進めておくことが大切です。
知らないことは損失
税理士も失業給付の対象になるということを知っておいて損はありません。オプションの一つとして頭の片隅に置いておくと何かのときに役に立つかもしれません。
せっかく雇用保険を払っているのですから、使える制度は使いたいですよね。国からの開業祝いとしてありがたく受け取っておくのが吉です。38万円あれば税理士の開業資金としてはかなり心強いです。
ゲスいと思われるかもしれませんが、後ろめたさを感じる必要はありません。雇用保険法で定められている正当な方法です。
法律とは意地悪なもので、知らないと損をする仕組みになっています。自分に有利な法律があったとしても、知らなければ何の役にも立ちません。
自分から情報を取りに行く者だけが、法律の恩恵をあずかることができるのです。有利な方法があったとしても誰も教えてなんかくれません。
税法でもよく感じます「税金の世界は「情弱がカモ」にされている。知らないことは損失」。納税額を減らせる有利な取扱いをしようと思ったら、納税者側から積極的に有利な取扱いを採用するようにしなければいけません。
国は少しでも税収を増やしたいので、あなたはこの方法にした方が税金が少なくなりますよなんてわざわざ教えてくれませんからね。