会計処理をしていると、売掛金の残高が合わないケースが出てきます。
残高が合わないとは、まだ回収していない売掛金の残高と帳簿上の残高が一致していないことを言います。
売掛金は貸借対照表の勘定科目なので、決算書の残高は実際の金額と一致している必要があります。売掛金の残高が違うと、正しい決算書は作れません。
売掛金の残高が合わないのは、何かしら会計処理が間違っているということです。
それでは、売掛金が合わないときはどこを確認したらよいのでしょうか?
売掛金の残高が合わないときのチェックポイントを確認していきましょう。
目次
手数料が引かれて入金されている
振込手数料が引かれて入金されている場合は、売掛金の消し込みに注意が必要です。
入金された金額で売掛金を消し込んでいると、残高が合わなくなります。
具体例で確認してみましょう。
(例)11,000円の商品を掛け販売した。後日、振込手数料220円が差し引かれて10,780円入金された。
売上時
(売掛金) 11,000 (売上) 11,000
入金時
(普通預金) 10,780 (売掛金)11,000
(支払手数料) 220
入金時の仕訳がポイントです。入金額は10,780円ですが、売掛金は11,000円消し込まないといけません。
よくあるのが、
(普通預金)10,780 (売掛金)10,780
と仕訳を切ってしまうミスです。
入金時に売掛金の残高が0にならずに中途半端な金額が残っている場合は、振込手数料分の消し込みが漏れていないかチェックしてみましょう。
間違った金額が入金されている
まれに得意先が消費税の処理を間違えて入金してきていることがあります。
入金額が違うのであれば、売掛金の残高はおかしくなってしまいます。
(例)11,000円(税込)の商品を掛け販売した。後日、本体価格の10,000円だけ入金があった。
売上時
(売掛金) 11,000 (売上) 11,000
入金時
(普通預金)10,000 (売掛金) 10,000
これは、自分のミスというよりは相手方のミスによるものです。
間違いに気づいた段階で先方に連絡して、正しい処理に修正してもらいましょう。
間違えたまま放っておくと、正しい残高はいくらなのかだんだんわからなくなっていきます。
少なくとも決算時には、正しい金額を確認するようにしましょう。
請求額の修正や値引きの処理忘れがある
当初の請求額から金額が変更になったりすると、請求書を複数回発行するケースが出てきます。
金額が変更になった場合は、最終的な金額で会計処理をしないと残高は合わなくなります。
売上の会計処理をするときは、請求書で金額を確認して仕訳を入力していくことになります。
請求書を複数回発行しているケースは、請求書をきちんと整理しておかないと間違った金額で処理してしまう可能性が出てきます。
請求書の数が多かったり、何度も金額を変更していたりすると、ミスをするリスクは高くなります。
取引量が多いときは、決算でまとめて処理するのではなく、定期的に処理していくようにしましょう。
売上の計上漏れがある
売掛金の残高がマイナスになっている場合は、売上の計上漏れがある可能性が高いです。
請求書をきちんと整理しておかないと、売上の仕訳を入力するのが漏れることがあります。
(例)11,000円の商品を掛け販売した。後日、11,000円入金があった。
【間違った仕訳】
売上時
仕訳なし
入金時
(普通預金) 11,000 (売掛金) 11,000
【正しい仕訳】
売上時
(売掛金) 11,000 (売上) 11,000
入金時
(普通預金) 11,000 (売掛金) 11,000
売上時に仕訳を切っていないと、売掛金の残高がマイナスになります。
このようなミスが多い場合は、売上の管理が上手くできていない可能性が高いです。
請求書の整理がきちんとできているか、今一度確認してみましょう。
現金売上が多い場合は特に注意が必要です。売上の計上漏れは、税務調査で重点的にチェックされる項目です。売上の計上漏れがあると、重いペナルティを課せられる可能性があります。
関連記事>>>税務調査で狙われる勘定科目と注意点まとめ
仕訳ミス
売掛金の残高が合わないのは、単純に仕訳を間違えているからということもあります。
仕訳ミスでやってしまいがちなのは、次のようなものがあります。
貸借を間違えている
貸借を間違えていると、残高は合いません。
(例)11,000円の商品を掛け販売した。後日、11,000円入金があった。
【間違った仕訳】
売上時
(売掛金) 11,000 (売上) 11,000
入金時
(売掛金) 11,000 (普通預金)11,000
【正しい仕訳】
売上時
(売掛金) 11,000 (売上) 11,000
入金時
(普通預金 )11,000 (売掛金) 11,000
間違った仕訳では、入金時に借方と貸方を逆に処理しています。
入金伝票や通帳の数字を見ながら入力した場合に、起こりがちなミスです。
仕訳の入力が終わったら、試算表や総勘定元帳で金額を確認する癖をつけるようにしましょう。
この例であれば、普通預金の残高も合わなくなるので間違いに気づくはずです。
他にも、売上なのに借方に金額が入っている場合は、貸借を間違えている可能性が高いです。
金額を間違えている
金額を間違えていると、残高は合いません。
(例)11,000円の商品を掛け販売した。後日、11,000円入金があった。
【間違った仕訳】
売上時
(売掛金) 1,100 (売上) 1,100
入金時
(普通預金) 11,000 (売掛金) 11,000
【正しい仕訳】
売上時
(売掛金) 11,000 (売上) 11,000
入金時
(普通預金) 11,000 (売掛金) 11,000
間違った仕訳では、売上時に0を一桁間違って処理しています。
このような処理をしてしまうと、売掛金の残高は当然合いません。
売掛金の残高が不自然に多いときや、残高がマイナスなっているときは、仕訳の金額が正しいか確認してみましょう。
慌てて処理していると意外とやってしまいがちなミスです。
関連記事>>>【経理のコツ】会計ソフトの入力で数字が合わないときの検算方法
勘定科目を間違えている
勘定科目を間違えていると、残高は合いません。
(例)11,000円の商品を掛け販売した。後日、11,000円入金があった。
【間違った仕訳】
売上時
(売掛金) 11,000 (売上) 11,000
入金時
(普通預金) 11,000 (売上) 11,000
【正しい仕訳】
売上時
(売掛金)11,000 (売上)11,000
入金時
(普通預金) 11,000 (売掛金) 11,000
間違った仕訳では、入金時に売掛金の回収として処理しないといけないところを、現金売上として処理しています。
このような処理をしてしまうと、売掛金は消えずにずっと残ったままになってしまいます。
売掛金残高を合わすコツ
取引先が多いときは取引先別管理
取引先が多い場合は、会計ソフトの補助科目を活用するのがおすすめです。
取引先ごとに補助科目を設定しておくと、取引先別に残高を管理できるので総勘定元帳の使い勝手が格段に上がります。
取引先ごとの請求額と回収額を対応させて管理すると、残高が合わないときの原因を解明しやすいです。
未回収になっている金額が明確にわかるので、資金管理の観点からも非常に有用です。
決算時には売掛金残高をきちんと合わす
売掛金の残高は、定期的に確認するようにしましょう。
売掛金の残高がズレたまま時間が経過すると、原因不明の残高が決算書に残ってしまうことになります。
一度残高が合わなくなると、その後残高を合わすのは非常に大変です。経理担当者が変わったりすると、残高を合わすことはもはや不可能です。
正しい決算書を作るためにも、決算時には売掛金残高をきちんと合わすことが大切です。